演題】エクアドルの実情と可能性
【講師】首藤 祐司前駐エクアドル大使(2018年9月~2021年10月)
現在は(一社)海外建設協会専務理事
【日時】2022年6月13日(月)10:00~11:15(日本時間)
【場所】オンライン
【参加者】52名
首藤大使は国土交通省(旧建設省)ご出身。講演では、日本との関係、中国との関係、社会の分断、2021年大統領選挙等について、その陰の部分を含めた「実情」に触れられた。エクアドルは、多様な自然環境と豊かな資源を持つ国である一方、旧植民地であるとともに自国がコロンビアとペルーという「大国」に挟まれていること等に由来する小国意識がある。
2021年大統領選挙では、強硬な反米左派のコレア元大統領(汚職で有罪となり滞在先ベルギーから帰国できない)の影響力が大きかったが、僅差(4.7ポイント。これは、ラッソ氏不利の予想の中では大差)で右派の銀行家ラッソ氏がコレア派候補を破って勝利。ラッソ大統領にとって、財政難(IMF等が支援)と議会運営(自らの党は少数派)が課題。自由で開かれた外交や経済運営を目指しており、太平洋同盟とCPTPPにも加盟申請。現在の経済は、製造業が未発達であり、低い生産性、硬直的な労働法制など問題を抱える。
社会の分断は、エクアドル社会の根本にある深刻な問題であり、民族や人種による所得格差は大きい。低中所得層向けの学校教育の貧弱さや、都市と地方のインフラ格差等に起因すると思われる。その社会の分断を背景とする2019年10月の暴動をきっかけに先住民団体が影響力を増し、大統領選挙でもその力が注目された。
中国との関係(米国に次ぐ貿易相手国、2国間融資の7割)はコロナ対策支援で強化されたが、中国が関与したインフラの欠陥などが顕在化。ただし、対中感情の悪化には至っていない。日本との関係は文化等を含め多くの面で良好であるが、経済関係は自動車など一部に限られ、深いとはいえない。日本大使館は「草の根・人間の安全保障無償協力」を活発に実施し評価を得ている。
講演後、米国・中国との関係、中国の社会インフラへの関与、鉱山開発の可能性、民間企業の投資の可能性等について活発な質疑応答があった。