連載エッセイ163:新井賢一「南米コロンビア・雲と星が近い町から」その2 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載エッセイ163:新井賢一「南米コロンビア・雲と星が近い町から」その2


連載エッセイ 160

「南米コロンビア・雲と星が近い町から」その2
知られざるコロンビアの変化に富んだ地

執筆者:新井 賢一(Andes Tours Colombia代表 ボゴタ在住)

南米大陸最北の国・コロンビア。実際南米大陸の地図をご覧頂くと隣国ベネズエラと共に北端にあるのがコロンビアですが、ほんの僅かながら「最北の地」がコロンビア領にある事が分かります。そんなコロンビアは日本のガイドブックでは全くと言って良いほど紹介されていない場所も含め、変化に富んだ地形である事は全く知られていないでしょう。そんなコロンビアの知られざる場所を二か所ご紹介します。

「コロンビアのグランドキャニオン」

首都ボゴタから北東へ約400km(空路約1時間)サンタンデール県都ブカラマンガの南約20km一帯にあるのが通称「コロンビアのグランドキャニオン」とも称せる「チカモチャ渓谷(Cañón del Chicamocha)です。この地は約5,000万年前に形成されたとされます。

このチカモチャ渓谷は上手くすると飛行中の機内から見る事が出来ます。実際この場に立つとそのスケールに圧倒されます。それもその筈、このチカモチャ渓谷は地球上で二番目に規模が大きいものです(最も大きいのは言わずと知れたグランドキャニオン)

渓谷の一番高い部分と最深部となるウンパラ(Umpala)川との高低差は約2,000m。川の両側はゴンドラで行き来する事が出来、V字のように一旦川へ吸い込まれるように下がった後再び上昇します。

ウンパラ川を挟んだ両側の頂上部は多くの人々が訪れる展望&観光スポットになっていて壮大な景色を一望する事が出来ます。さすが地球上で二番目にスケールの大きいこのチカモチャ渓谷の眺めは圧巻そのもので、この場にいつまでもいても飽きない程です(個人的感想)

ここチカモチャ渓谷ではまさに太古の世界を実感できます。考古学ファンの方々には魅力ある場所でしょう。実際この場からはアンモナイトなどの化石も多数発掘されていて、この場が海底下にあった事が分かります。壮大なスケールの観光地ではありますが日本の方々には全くと言えるほど知られていない場所でしょう。是非とも訪れて頂きたい所です。

「南米大陸最北端・グアヒラ半島と先住民族ワユー」

南米大陸の地図をご覧頂くとコロンビアとベネズエラとの国境地帯としてグアヒラ(Guajira)半島があります。この半島でコロンビア側に位置する部分が地理上の「南米最北端」となります。故にコロンビアは「南米大陸最北の国」と称する事が出来ます。南米大陸最南端は氷と雪に覆われた世界ですがここグアヒラ半島・特に最北部分の大半は砂漠地帯であり、南米大陸最北端が砂漠の地である事は日本の皆さんは殆どご存じない筈です。

このグアヒラ半島に住んでいるのがコロンビア国内最多の先住民族ワユー(Wayuu)です。ワユー族はコロンビアとベネズエラ両国にまたがる広範囲に居住していて、昔ながらの生活を維持しながら暮らしています。大半の人達は砂漠地帯の中に伝統様式の家屋を作り住んでいますが、中には市街地付近に住居を構えている人々も多く、グアヒラ県都リオアチャ市ではワユー族の人達の姿を容易に見かける事が出来ます。

グアヒラ半島は砂漠地帯と前述しましたが、それ以外にもこの半島では多彩な風景を見る事が出来ます。その一つが「塩田」です。カリブ海から海水を引き込み、塩田を利用して塩を生産しています。中にはワユー族の人達が手掛ける塩田もあります。塩田は晴天の日が続き水温が高い状態が維持されると海水の中に含まれる微細藻が爆発的に増殖して赤く染まり幻想的な姿を見せてくれます。

リオアチャ市からカリブ海沿いに西へ車で約30分の場所にあるのがカマロネス(Camarones)と呼ばれる一帯です。ここはカリブ海の海水が入り込むとても大きな湖で、
フラミンゴ生息地として知られています。フラミンゴは水深が浅いこの海水湖に住む小エビを好んで食べる事、その小エビ漁で生計を立てている地元民が多くいる事から、小エビのスペイン語の名であるカマロネスがそのままこの地域の名前になっています。

この湖では観光客向けに手漕ぎ船で湖を巡る事が出来ます。浅い水深は本当に浅く、大人の膝程度の深さしかありません。それが故にフラミンゴ達の憩いの場にもなっていて、かつあまりにも水深が浅い為モーターボートは船外モーターが使用出来ないので手漕ぎかつ手作りの帆で行先を自在に操ります。勿論溺れる事はありません(笑)

グアヒラ半島の名産品と言えば昨今日本でも人気が出て来ている「ワユーバッグ」です。ワユー族の女性達が編み上げるカラフルな色のワユーバッグはリオアチャ市内の海岸沿いのメインストリートや市内の専門市場で売られています。旅のお土産には最適な逸品は作り手の目についた様々な光景などを幾何学模様にして編み上げられています。実用品として使えるこのワユーバッグ、コロンビア土産としてお勧めです。

グアヒラ半島ではこの他、4WD仕様車で数日をかけて南米大陸最北端に近い砂漠地帯に行くツアーもあります。是非ともコロンビアを訪れてみて下さい。