連載エッセイ166:ピーター藤尾「チリの風」その3 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載エッセイ166:ピーター藤尾「チリの風」その3


連載エッセイ163

「チ リ の 風」その3
(2022年6月分)

執筆者:ピーター藤尾(在チリ・サンティアゴ)

「2022年5月2日~8日」

朝晩はともかく昼間は先週より少し暖かいサンティアゴでしたが、日曜日は霧雨になって初冬の雰囲気になりました。さて今日、サンティアゴマラソンがありました。日曜日は地下鉄は8時から走りますが、今日は特別で6時から運行が開始されました。選手が会場に7時に着けるようにとの特別手配です。

「5月30日~6月5日」

(政治)

1)ボリッチ動向

今週の最大の話題はこれです。彼にとって初めての年次教書の発表です。政治・経済・一般の各項目で今年・任期中に実行する案を発表するわけです。その中心項目になる税制改正は経営者陣ともめるでしょうね。今月中に政府案の詳細を発表するとか。国会で約500名の議員・関係者を前に2時間20分のスピーチをしました。そしてなんとその夜に全テレビ局で特別番組として年次教書の追加を発表しました。しかしこのエレルギーはすごい。普通なら2時間もスピーチをすれば疲れ切って国会のあるバルパライソ市から首都に戻り、すぐ自宅に入るはずですが、彼の場合は教書に満足せず、モネダ宮殿の事務所に部下を集めて内容を検討させ、足りないと思われた部門に追加のコメントを入れたわけです。

私は長々と続いたその演説の一部をテレビ中継で見ました。コロナ問題で、「私はワクチンの接種が大事と考えるが、その接種を始めたのはピニェラ政権で…」とコメントすると与党側から、何故反政府のピニェラを持ち上げるのかと厳しいクレーム。それは事実ですよ。社会格差を是正する、貧困層に援助する(灯油価格を下げる、ガソリン価格が上がらないようにする、バスなど公共運送費用が上がらないようにする)そして彼らのために6万5千軒の家屋を建てるとしました。労働者の保護として最低賃金のアップ、労働時間を最高週40時間にするとしました。犯罪の問題軽減に全力を上げるとしましたが、右翼の区長が「そんなコメントは信用できない。毎日、事件が起きているのに警察力の増加など全く聞いたことがない」と厳しいコメント。

現行の年金システムを全面的に更新させるようですが。現在各自が持っている基金には国は手を出さないとしました。マプチェ問題で同地区に警備の仕事をしている軍隊をその努力に感謝するとしました。大統領としてのコメントですね。新左翼の頃は軍隊は権力者のために存在していると批判していましたから。

この演説の前に発表された 世論調査で、彼を支持するは27%、不支持は57%でした。この演説で少しは変わるかな?さて今日の夕方、彼は大統領専用機で北アメリカに。カナダとアメリカの大統領と面談とか。どうなるかな?

2)新憲法委員会

世論調査で新憲法を認証するは29%、拒否するは45%でした。長い間、変わりませんね. 来月初めにこの委員会の活動は終了します。そして9月に新憲法是非の投票になります。これが可決されるのかどうかチリにとって一大事になりますね。今日の新聞の特集で新憲法が否決されればどうなるかと言うのが書かれました。

軍事政権時に作成された現行憲法を民主化のもとに改善すると言う意見が出され、その声が大きくなったので、政府は新憲法是非の投票を認めました。単純に言うと左翼は新憲法、右翼な現行憲法支持になります。そしてその是非の選挙でイエスが勝ち、新憲法への移行が動き出しました。次に新憲法作成をする委員の選挙が始まり委員が任命されました。ここまでくればすべて過半数で来ているから、どんな新憲法が出来てもそれを認証するのが当然と言うことになりますが、世論調査では別の結果になっています。委員の質があやしいとか、現行をどう変化させていくのかがちゃんと報道されていないと言うこともあり、新憲法否決の声が大きくなっているわけです。

(経済)

1)銅価格と為替

1ポンド4.29ドルと先週よりアップしました。このため為替は1ドル815ペソとペソ高になりました。チリにとってありがたい傾向ですね。

2)ガソリン価格安定化

15億ドルをシステムに注入して、小売価格の安定を狙うことになりました。さぁちゃんと機能するかな?

3)家の販売価格

ラテンアメリカの各市の中で、価格の比較が行われ、サンティアゴはその中で高い順で3番目に入りました。プンタ・エステ市(ウルグアイ)が首位、2位はメキシコのリベラマヤでした。サンティアゴの人は家屋の購入に大変な苦労をしているわけですね。

4)観光

外国からの観光客を受け入れるため、ワクチン接種のことなど入国制限を軽減することにしました。1-4月の数字ですが、コロナ問題の始まる前の2019年は190万人が入国、20年は108万人、21年はわずか7万人でした。それが今年は32万人に増えています。さぁこれから今までの数字に近づくかな?イースター島は8月1日から入島可能になりますが、それに先駆けて、今週、政府関係者のグループが入島。2年半ぶりの観光客でした。このままコロナ問題がうまく治まって行ってほしいです。

(一般)

1)コロナ問題

先週よりさらに数が増えて新規患者数が1日8500人まで増えました。もっとも今までにも書いているように、PCR検査の数が2倍になれば新規患者数も2倍になるのは当然で、患者数が増えたと大騒ぎするのは意味がないのでは。陽性率は以前より増えているのは事実ですが。そのほかに6月1日から4回目のワクチンを接種していない人の移動パスが取り消されました。なんでも180万人がそれにあたるとか。そこで厚生省の関係者がレストランに入り、お客さんに移動パスを見せるように要求しました。それがテレビのカメラに写っていましたが、店のオーナーが嫌がってテレビ局の人間を外に出しました。移動パスがない客がレストランの中にいれば、客に罰が行くのか、レストランに行くのか知りませんが、チェックが頻繁になればレストラン・バー・スナックなどの経営に影響しますね。

2)マプチェ問題

殆ど毎週同じです。今週も南部各地で車や家屋への放火が続きました。大統領特例で軍隊を派遣していますが、それが15日間延長になりました。その期間に国会で討議するのか、この特例を無期限に継続するのか。同じように高校生の暴動も継続。今週も車両への放火がありました。しかし高校生がモロトフ爆弾を作って校外の道路で車両にぶつけるのはどうして防げないのでしょう、学校も警察も見ているだけですか?最右翼のUDI党はボリッチに文書で問題軽減のため、火炎爆弾を投げた学生の処置をしてもらいたいと要請。

学生グループは問題の存在を無視して自分たちを攻撃するUDIは恥知らずだと発表しました。ボリッチがやっていた学生運動の時と同じようですね。

3)世界の料理 

テイスト・アトラス誌の発表で世界各国の料理が比較されました。チリはラテンアメリカ諸国の中でメキシコ・ブラジルに次ぐ3位。ペルーやアルゼンチンより上位で世界の30位でした。日本はさすがに6位です。            以上

「6月6日~12日」

(政治)

1)ボリッチ動向

私の先週の予想が当たって、彼の年次教書が良い印象を与えたようです。6月の世論調査で彼を支持するは44%まで上がり、不支持は47%に下がりました。その教書ですが、68%の人が教書の発表を見たらしい。そしてその内63%はそれを評価するとしました。その数字は2014年の時以来の高い数字。ボリッチの人気が上になったわけですね。

ところが、その後の政府機関の世論調査は全く逆の結果が出ました。ボリッチを支持するは32%にしかならず、民主化が始まってから最低の数字でした。国民の多数が、社会の安全・経済の安定を現行政権は実施できないと悲観的です。内閣の中では大蔵大臣がトップの評価を受け、逆に大統領に次ぐ内務大臣が低い評価を受けています。

さてボリッチの北米出張ですが、先ずカナダでトルードウ首相と会談して、同国の安全体制が隣国アメリカと全く違って堅固なのを評価し、カナダの銃の所持の仕組みをチリも学びたいとしました。

翌日、アメリカに入り米州首脳会談に出席しましたが、その前にロス・アンジェルスの区長と面談。水不足から来る問題を話し合いました。両者ともその問題を抱えています。さらに起業家と会議をしました。彼は「チリでは右翼から左翼に政権が変わったが、皆さんの企業に与える影響はありません。皆さんの権利は全く不動です。税務問題とか自然保護などの問題で関係省庁が連絡してくることは考えられますが、それは各省庁の動きで、責任は政府ではありません」

彼は「世界はチリを必要とする。そしてチリも世界が必要だ」としました。その首脳会議に関しては良かった・大きな成果はないと評価が分かれていますが、ボリッチには初めての各国首脳とのコンタクトで値打ちはあったと思われます。その後、バイデン大統領と少し面談しました。この北米外遊で、彼は英語とフランス語を使って面談しました。会談出席者の中の男性でネクタイを締めていなかったのは彼だけです。

2)新憲法委員会

ボリッチの件と同じく新憲法を承認するはアップして42%、拒否するは下がって45%になりました。ほとんど互角の勝負ですね。9月まで緊張は継続です。右翼側はもし否決が勝つとすれば、私たちは現行憲法の一部改訂を提案したいと余裕を見せています。

(経済)

1)公定金利の上昇

中銀の発表で再度金利が上がり9%になりました。昨年12月は4%でしたから、短期間に極端な上昇をしたことが分かります。5月のIPCが再度大きく上昇していますから、物価上昇と金利の上昇が競っています??その物価上昇率は1.2‘%、過去12か月で11.5%と高めで動きません。このため、物価上昇率が賃金上昇を上回り、今月は実質賃金が下がりました。

2)銅価格と為替

1ポンド4.33ドルと高値安定、為替は1ドル827ペソとややペソ安になりました。

(一般)

1)コロナ問題

木金と二日続けて新規感染者数は11000人を超えました。土曜日も10600人とほぼ同じ。陽性患者総数は47000人と3月以来の高い数字になりました。現内務大臣はピニェラの時代は医師協会の会長をしていて、政府のコロナ対策が適切ではないと批判していました。彼女が政治を動かすようになったら、適切な指示を厚生大臣に出していないようです。感染をどう抑えるか政府案は全く出ません。もっとも市民も緊張している様子は全くありません。慣れてしまったの?

2)マプチェ問題

毎週、同じですね。今週もカニェテなどで放火事件が継続。死亡者も出ています。ビオビオ・アラウカニア州(第8,9州)の各地で市長・町長が脅されていると報道されました。コントロールができないわけですね。森林地区でトラックや重機に放火され、軽四輪車が盗まれるる事件が毎日続いています。今日の新聞に「消えかかった町の明かり」

として第9州のカピタン・パステネスの特集が組まれました。20世紀の初めにイタリア人の移民が住み着いた町です。イタリアの雰囲気で人気があったのですが、今では誰も来ません。以前はイタリア系とマプチェは友好な関係でしたが、今ではマプチェが移民の子孫の車に銃弾を浴びせ、出て行け侵入者と言うとか。

コロンビアのゲリラ組織が同国の領土の一部を占拠していましたが、チリでも同じようなことが起きているわけです。ボリッチ政権は彼らとの会話が必要だとし、内務大臣がアラウカニア州を訪問しましたが、全く誰とも会えないで首都に逃げてきました。ボリッチもそこには行けません。政府は3回目の軍隊駐屯案を国会が承認するよう要求中です。これに関して前政権の内務大臣がどうしてこの案を犯罪が抑えられない首都圏にも運用しないのかとコメントしています。

さてマプチェの最大勢力のCAMの創始者がテレビのマイクの前で、彼らの信条を語りました。その中で学校の占拠案(彼らの管轄に置く)も出ました。もし彼が国会を訪問して、下記のように話せばどんな反応があるでしょう?「私はマプチェを代表してここに来ている。私は君たち全員を刑務所に送り込みたい。君たちがマプチェにおこなったことの責任を取らせるためだ。チリが独立した時アラウカニアはチリの領土ではなかった。しかし君たちは一方的に侵入し私たちの領土を奪い、住民を殺害した。その時、政府は会話が大事だと言ったか?ノーだ。国会は暴力はいけないと言ったか?ノーだ。私たちが森林会社の土地から材木を盗んでいると君たち喚くが、ここは私たちの領土だから、盗んでいるのではない。私たちが麻薬を扱っていると君たちは批判してくるが、君たちが銃で私たちを攻撃してくるのをどう防げばよいのか?私たちも銃で防衛する必要がある。君たちの銃は国税から費用が出るが私たちには税金は回ってこないから銃を購入する費用を自分たちで出す必要がある。税金を回してくれるなら麻薬を扱う必要はない。私たちはマプチェの領土に入ってきている君たちを追い払いたいのだ。のんびりとあの昔の頃のようにマプチェの生活を送りたいのだ。君たちの狂った頭を正常化したいのだ。君たちも私の言う事実を真摯に考慮し、一方的な考え方でマプチェを攻撃するのは止めてほしい」もちろん、これは私の発想ですが、これが発表されれば、世界中でマプチェ問題が取り上げられるでしょうね。

いつも付加として出していますが、高校生の暴力デモも継続で、その内の一つとして有名な高校INBAの校長室に火がつけられました。その学校は授業が停止になっています。またイタリア広場のデモも金曜日にあり、交通が遮断しました。全く進展・改善がありません。

3)観光

パタゴニアの最も有名な観光地はプエルトナタレスにあります。そこにサーモン業界が進出し、自然破壊の問題が出ています。養殖が全部悪いと言うことはないし、全部問題ないと言うこともありません。つまり今、そこで自然汚染が起きているなら現在そこで操業している会社に適切な指示を出すべきです。操業停止ではなく改善指示ですね。市民は観光が大事なのはわかっているが、サーモン関連でかなりの人が仕事を得ているのは喜ばしいと養殖廃止には反対しています。

4)大気汚染問題

またキンテロなどで大気汚染問題が起こり、多くの住民の生活に影響が出ています。学校も授業が止まっています。ピニェラの時に大問題になった同じ地区です。その近くの数社の企業が石炭火力発電や化学薬品などを使用した操業をしており、問題の本質は既に明白のはずですが、問題が再燃しました。

その頃、反政府だった新左翼は、政府は企業の側に立って市民の健康を守るために企業の行動を抑えることをしないと批判しましたが、今こそ自由に企業を規制してほしいです。新聞にこの大気汚染問題は3月に始まっているのに政府は何ら対策を取ろうとしなかったとされています。右も左も政治家は同じですね。

「6月13日~19日」

(政治)

1)ボリッチ動向

最初の4日間、体調が悪いと自宅勤務をしました。しかし最後の金曜日は大活躍でした。

先ず、モネダ宮殿で新税制について演説しましたが、この新税制は誰かを敵にすると言うのではなく、公正に全ての企業に適応するよう改正したいとしました。その後、先週話題になった第5州の大気汚染問題で、コデルコが所有する精錬所を閉鎖すると発表しました。「同地区にある10数か所の工場が大気汚染の源泉になっている。それは50年も前から継続している。つまりその間、時の政府は大気汚染の問題より産業開発の方が重要だと判断したわけだ。しかし私たちは違う。この問題で同地区の住民が病気になり、大気汚染指数が発表されると、近くの学校の授業が中止になると言うのは認めがたい。

従ってコデルコ銅公社が所有する精錬所を段階的に封鎖することにした。しかし同工場で働く従業員を解雇するつもりはない。彼らとその家族に問題が起きないよう考慮して新政策を実施する」としました。その日の午前中に同社のダイレクター委員会が行われ、「我々はチリを代表する企業だ。また世界最大級の銅会社だ。それが市民に与える問題を抑えることが出来ないのは恥になる」とし、同精錬所を永久に閉めることにしたもの。同工場の労組は同市の道路を封鎖して、反対の動きをしています。全国的に政府案に反対するデモを実施するとしています。

しかしボリッチの提案は大気汚染を防ぎ、そのために起きるだろう社員の解雇は認めないとするわけですから、立派なものです。完全封鎖迄5年と言われますから、その間に同精錬所で行っていた作業を他の地区に移し、その新工場は汚染を出さない(もしくは少なくする)で現状より良くなるわけでしょうね。そこで仕事が見つかれば社員の問題はほとんどでないでしょう。この問題は4年前、大問題になりましたが、ピニェラは各企業への政府の検査を入れるとあやふやな結論で終え、結局、改善はされませんでした。

そのコデルコの精錬所は最近、運転を止めていたそうですが、同地区の汚染度はあまり変化がなかったとか。つまり、コデルコ以外の15社の方が汚染指数が高いのでしょうね。彼らは汚染縮小のために何をするか発表していません。

今日の新聞に就任100日のボリッチの試行錯誤として10の疑問点が書かれました。就任する前、ピニェラ政権の反政府側だったわけで、そのころの彼の言動と現在がどう違うかが書かれています。まず警察で、3年前の社会騒乱以来、警察はデモ隊に襲い掛かると言うコメントをしていましたが、今では警察はしっかり仕事をしていると評価を変えました。マプチェ問題で現地の安全確保に軍隊を使用していますが、それも昔は反対していました。厚生年金の引き戻しも昔は賛成でしたが、今は反対。移動パスも意味はないとしていたのに、今は4回目のワクチンを打っていないと移動パスが使用不可になると方向転換。

その他の件も入れて、就任後は通常の人間になったようです。

2)新憲法委員会

新憲法委員会の最後の日に前・元大統領を招いて記念式典を催すようですが、4人の招待大統領の中で2人は招待を断りました。いろんな考え方があるわけですね。

(経済)

1)銅価格と為替

1ポンド当たり4.13ドルとこの1月で最も低い数字になりました。それに関連して為替も大きく動き、1ドルが870ペソで終えました。しかし週日に877ペソと過去最高の数字にまでなっています。

少し前、3月30日は777ペソでしたから、わずか2か月と少しで100ペソも下がっています。インフレがひどいと言うのは、毎週の話題になっていますが、そのため、今年は貧困層の比率が拡大しそうとか。今まで段階的に減少していたのですが。

2)最低賃金

国際機関の発表で世界の数字を比較した所、チリは下から6番目の酷いランクでした。1時間当たり3.3ドルです。ペソが弱くなるとこの数字が下がるわけです。8月から最低賃金がかなり上がりますから、次回の発表時にはもう少し良いところになるでしょう。一番低いのはメキシコ、そしてブラジル、ロシアでした。日本は19位で8.2ドルとか。同じようですが、国際競争力ランクでチリは64か国中、45位になりました。一番良かったのは2005年で19位でした。世界で19位なんて素晴らしい感じですが、政治・経済の混乱から競争力が低下していったのですね。またいつか上に上れるかな?

(一般)

1)コロナ問題

金曜日12111人の新規患者が出て、最近数か月で最大の数字。昨年、自宅待機令が出ましたが、その時の患者数を上回っています。今年はその自宅待機令は全国のどこにも出ていません。つまりピニェラ政権の時は危機状況だったのが、現政権ではまだ許容範囲としているわけです。もちろん私は自宅待機に戻りたいとは思いませんが。毎週、患者数が増えているのは心配ですね。猿菌と呼ばれる新しい病気にかかった最初のチリ人が見つかりました。その人は欧州から戻って来たとか。21日間、入院します。発熱、背中の痛みが目立つとか。それが新しいパンデミックになりませんよう祈ります。コロナ問題など病気に関連して、この冬休みを大きく変更します。冬休みの開始を早め、期間を長くします。子供は大喜びと言う雰囲気はありませんが。

2)マプチェ問題

先週の動きは緊張感が上限まで達したと言う感じでしたが、今週も変わりません。ボリッチは軍隊派遣の延期を要請し、国会がこれを承認しました。普通、政府案は与党がイエス、野党がノーとするのですが、この案件では逆で、右翼の野党は全部、賛成で、与党は賛否に分かれました。共産党や新左翼は軍隊を使用すると言うのに違和感があり、軍隊を中心にするこの法案は認められないとするわけです。

今週も、マプチェなどの反政府運動は活発に行われ、重機・家屋への放火は日常茶飯事になっています。

「6月20日~26日」

(政治)

1)ボリッチ動向

コデルコのスト突入と終焉

コデルコの労働者がストに入ったので、毎日、多くの金が失われると言われました。なんでも一日当たり何百万ドルになるだろうとか。そんなに?

精錬所の労働者グループの代表は共産党員でした。共産党は現政権で与党側ですが、労働者のリーダーになるのは得意ですからね。

今まで、こういうストは数週間、ひどい時は何か月も続きましたが、今回は何と1週間にもならず終焉。どういう合意事項があったのか良く報道されませんが、全く不思議な終焉方法でした。新聞の社説にこれに関してベンタナス精錬所完全封鎖を実施するための、事前の政府の準備が不自由分だったことが明白だと厳しいコメントが書かれました。その精錬所は、独立した1部門ですが、採算が悪く、毎年赤字でした。このため精錬所を閉めるアイデアが2011、2015,2019年に出ています。つまり今回は4回目です。それだけ効率の悪い、そして大気汚染のひどい工場を維持していく必要はないですね。しかしストに入った労働者の声はコデルコ幹部やボリッチ大統領より大きかったわけです。どうしてストが解決したか、その内、秘密が漏れてくるでしょう。

それから労働時間を週40時間とすることを政府案にして、国会に送ります。新税制は7月1日に政府案が発表されますが、それに先立ってマルセル大蔵大臣は過去の大蔵大臣と会談する予定とか。プロの意見を聞くのは大事ですよね。社員で所得税を払っている人は過去16年で16%から25%に上がっています。

マプチェに関しては、一向に状況は良くなりませんが、また国会に軍隊駐屯案の承認を要求しました。素人の私には何故その期間が15日で、頻繁に延長するのか分かりません。少なくとも3か月にすれば、6回分になりますからね。最右翼のUDI党の議員が、「私たちは政府案を承認するからボリッチは、仲間の人間の説得を図る必要がありますね」と馬鹿にしていました。世論調査でボリッチを支持するは25%、不支持は44%でした。もういつもの数字ですね。

2)新憲法委員会

与党グループのキリスト教民主党DCの元党首9名が新憲法の是非について各自の自由にさせたいと発表し揉めています。普通、党として賛成反対を明白にするものですが、これに関して党が二つに分かれているわけです。党員の一部が新憲法反対のグループを作って行動し始めました。そうそう委員会の最終日に元大統領を全員招待しましたが、4人が全員出席を拒否しました。何かその裏にあるのですね。

来週に新憲法委員会の全行程が終わります。なぜか、お疲れさまでしたと言う気にならないのですが。鉱山関連の新憲法案に関し討論会がありましたが、委員がチリや世界の実情をちゃんと理解しているのか心配です。

世論調査では新憲法を拒否する人の方が認証すると言う人より多くなっています。9月4日の投票の結果が、どうなっても社会騒乱が起きるだろう予想されています。

(経済)

1)銅価格と為替

銅の価格はポンド当たり3.75ドルと先週から10%も下がりました。2021年12月以来の最低の数字です。このため今週は対ドルでペソが大きく落ち込み、1週間で41ペソも下がりました。この数字は2009年以来の大きな落ち込みです。為替は1ドル918ペソになりました。それは歴史上初めての記録です。中銀は手持ちのドルを売って、この動きを抑えるらしい。この先どうなるのか極めて不安定な状況が続きそう。

(一般) 

1)コロナ問題

今週も一日の新規感染者数が1万人を超えました。ピニェラの時は厚生大臣がテレビの番組で感染者数について発表・解説をしていましたが、ボリッチになってそれは無くなりました。1万人を超えると大騒ぎをした感染者数が今ではほとんど取り上げられません。余裕が出てきたのか、5次の波でもう慣れてしまったかのようです。金曜日も土曜日も新規感染率が17%台と104日ぶりの高い数字でしたが、厚生省はそれほど驚かなったようです???

2)犯罪の増加

サンティアゴの大規模集会場で行われていた数千人が参加したパーティの途中、銃の発砲があり、4名の負傷者が出ました。その他に、街のディスコでも発砲事件があり負傷者が出ました。なんだかアメリカ合衆国のようですね。ボリッチが銃の所持を禁止する法案を用意していますが、それに抗議するデモがありました。国内で正規に販売された銃器が犯罪に使用されたとは報道されていない。つまり不正に入った銃器、もしくは盗難されたものが犯罪に使われているわけで、正規のルートを無視する・廃棄すると言うのは過ちとしています。どうでしょう。

以  上