LAC諸国は過去2年半余り、コロナ禍、中国の景気後退、FRBの利上げサイクルなど、そのどの一つをとっても相当に困難な状況だったうえに、今回のウクライナ侵攻の煽りを受けて複雑な国際経済・政治環境に置かれている。ロシア・ウクライナ戦争は、2022年の世界の経済成長の大幅な減速の一因となるほか、戦争以前に始まった燃料と食料の価格上昇を加速させ、低所得国の脆弱層に甚大な悪影響を与える。
また、ロシアのウクライナ侵攻は、ロシアのLAC同盟国に対する地政学的影響力を低下させるだけでなく西半球における地政力学のバランスを揺るがす。LAC指導者のなかには、中国やロシアと連携することで自らの立場を強化しようとする主脳もいる。
本レポートは、ロシアによるウクライナ侵攻がLAC地域に与える影響について、上下2回に分けて、経済的および地政学的視点から論考する。「レポート(上)」では、ウクライナ侵攻が世界経済に及ぼしている影響を踏まえたうで、スタグフレーションの背景にある一次産品価格の動向、2022年のLAC経済見通し、ロシア・ウクライナ産の国際商品の代替調達先としてのLACの可能性について考察する。
次に「レポート(下)」では地政学的視点から、紛争がLACの対ロシア・ウクライナ貿易に及ぼす影響、ウクライナへの軍事介入をめぐるLAC諸国の一貫性に欠ける対応、米国の対ベネズエラ制裁、LACの新しい世界秩序における立ち位置などについて分析する。
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ラテンアメリカ・カリブ研究所レポート「ロシアによるウクライナ侵攻で激変する国際社会:ラテンアメリカ・カリブ(LAC)諸国への経済的・地政学的影響とその対応(上)」桑山幹夫