南米大陸を東西に横断する南米大陸横断回廊は、2023年の全線開通を目指し、コロナ禍にもかかわらず幹線道路の建設が進められている。本稿では、メルコスール加盟4か国(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ)に準加盟国のチリを加えた南米南部諸国を中心に、大陸横断回廊が各国の経済発展へ及ぼす影響や、今後の域外と南米南部諸国との経済的結びつきおよび投資環境の展望、域内で活発化が予測されるヒトの移動に着目し、大陸横断回廊が寄与する観光業の発展について分析・考察した。その結果、大陸横断回廊が生み出す経済的発展の潜在性は高いものの、南米南部諸国のうち、ブラジルとチリは多大な経済的恩恵を享受できるが、アルゼンチンとパラグアイは、これまでの海上・河川輸送に依存してきた輸出入関連の物流網に変革が起こせるかどうかに左右されるだろう。
大陸横断回廊が観光業に与える影響については、同回廊が通過するブラジル、チリ、アルゼンチンと比べ、圧倒的に観光資源が乏しいパラグアイを特に取り上げた。筆者がアスンシオン国立大学南米大陸横断回廊調査プロジェクトメンバーに加わっていることもあるが、観光客を惹きつける観光地の魅力を最終目的地と誘導的目的地に分けた場合、同国は誘導的目的地として、戦略的にエコツーリズムを展開していく必要性があると指摘した。
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2022.08.05 会員限定から一般公開に切り替えました
ラテンアメリカ・カリブ研究所レポート<<寄稿>>南米大陸横断回廊建設によるヒトとモノの新たな流れ-外国投資促進および域内観光開発の可能性(人間環境大学専任講師 小谷博光)<目次>
はじめに
1. 南米大陸横断回廊の軌跡
1.1. 大陸横断回廊建設の目的と予想される経済的効果
1.2. 南米南部地域で進む様々な地域統合
1.3. 建設工事の進捗状況
1.4. 南米南部地域の域内外貿易の多様化および円滑化に貢献する大陸横断回廊
2. 南米南部地域内で生まれるモノとカネの移動
2.1. 世界各地から南米南部地域に寄せられる海外直接投資
2.2. 短期的な世界経済の動向とラテンアメリカ・カリブ地域
2.3. 急速に変化する投資関連の制度と国際的な枠組み
2.4. 大陸横断回廊周辺国の貿易環境
3. ヒトの移動を促進する大陸横断回廊の展望
3.1. ヒトの移動と関連がある域内におけるサービスと業種の発展可能性
3.2. 豊かな自然環境が残る南米南部地域に根差したエコツアー
おわりに