『ブラジルの歴史を知るための50章 – ヒストリー エリア・スタディーズ187』 伊藤秋仁・岸和田仁編著  | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『ブラジルの歴史を知るための50章 – ヒストリー エリア・スタディーズ187』 伊藤秋仁・岸和田仁編著 


 多様性に富むブラジルについては、日系三世のアンジェロ・イシ武蔵大学教授による『ブラジルを知るための56章【第2版】』(2010年 https://latin-america.jp/archives/5750)という本シリーズでも傑出した解説書があるが、本書は歴史に注目してブラジルの“発見以前”から始め、「植民地期」「帝政期」「共和制期」「軍事政権期」「新共和制期」と順を追って通史を解説していくとともに、先史時代を巡る考古学論争から森林破壊と先住民族の抵抗、森林破壊型から持続可能型開発を模索する農業、黒人反乱者を奴隷から解放し西アフリカ送還したディアスポラ、食文化やサッカーなど、様々な視点からの17編のコラムを交えて補足している。
先住民と植民者ポルトガル人、奴隷として拉致されてきた黒人のそれぞれの間での混血によって多人種社会ブラジルが生まれたのだが、人種の混淆をポジティブに捉えた人種民主主義の理念が唱えられた一方で、人種間の経済、教育等の格差と不平等が現実にあることはブラジル近現代史を知る上の重要なテーマであることを念頭に置いて編まれており、多様なブラジル史を知るための有益な一冊となっている。

〔桜井 敏浩〕

(明石書店 2022年4月 391頁 2,000円+税 ISBN978-4-7503-5386-9 )
〔『ラテンアメリカ時報』 2022年夏号(No.1439)より〕