『聖ヤコブ崇敬とサンティアゴ巡礼 ―中世スペインから植民地期メキシコへの歴史的つながりを求めて』 田辺加恵・大原志麻・井上幸孝 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『聖ヤコブ崇敬とサンティアゴ巡礼 ―中世スペインから植民地期メキシコへの歴史的つながりを求めて』 田辺加恵・大原志麻・井上幸孝


イエス・キリストの12使徒の中で最も早く殉教した聖ヤコブの遺骸がどこに埋葬されたかは聖書に記述はないが、9世紀にスペイン北部のガリシアで聖ヤコブに墓なるものが発見され、サンティアゴ・デ・コンポステラの大聖堂が建てられ、ローマ、エルサレムとともにキリスト教の三大聖地の一つとして巡礼地となり、で今も多くの巡礼者がイベリア半島、フランス等欧州、世界中から目指して来る。特にスペインを中心に欧州で崇拝されている聖ヤコブ(スペイン語ではサンティアゴ)の名を冠した町はイベロアメリカ各所にある。
本書は、イベリア半島に於ける聖ヤコブ崇拝の始まりと新大陸での展開の歴史的経緯、これまで中世スペインと植民地時代メキシコを同じ枠組みの中で議論されたことがなかった時代や地域を越えた歴史的つながりを、聖ヤコブを軸に一つの流れの中で考察しようとしたものである。最後の第4章でクロニカ(年代記)における聖ヤコブの記述を中心に、スペイン征服以降のメキシコ先住民が聖ヤコブ崇拝をどのように教えられ受容したかの実態を、メキシコ史・メソアメリカ史が専門の井上専修大学国際コミュニケーション学部教授が考察している。

〔桜井 敏浩〕

(春風社 2022年3月 360頁 4,400円+税 ISBN978-4-86110-785-6 )
〔『ラテンアメリカ時報』 2022年夏号(No.1439)より〕