ブラジルで来る10月2日、4年に1度の総選挙が実施される。正副大統領のほか、州知事、連邦の上下両院議員、州議会議員を同日で選ぶ、世界でも有数の規模の選挙である。選出ポストは、中央・地方合わせて1,627、有権者総数は1億5000万人に上る。大統領選挙は、現職の右派ボルソナーロ大統領と、2003年から10年まで政権トップの座を務め同国を新興国の雄に引き上げた左派ルーラ元大統領の一騎討となっている。2日で勝敗が決まらず、30日の決選投票に持ち込まれる公算もあると観測されている。
本稿は、この膨大な選挙を支えているブラジルの選挙システムを解説する。投票結果の集計はもちろんのこと、有権者登録から投票、有権者の生体認証までデジタル化が進み、アマゾンを含め広大な国土を有しながら、投票日即日に選挙結果が発表されるスピード感を誇る。ただ自国の投票システムに対し、劣勢にあるボルソナーロ大統領は政府首班でありながら、米トランプ前大統領張りに、その信頼性に再三疑問を呈している。政権を握るのは誰かといった選挙結果とは別に、選挙システムがスムーズに運用されるかは、国内外の信頼性を左右し、ひいては37年前(1985年3月)に軍政に取って代わったブラジルの民主体制の今後にとり極めて重要な一事となっている。
<目次>
はじめに
1. 選出ポスト
2. 投票までのプロセス
3. 有権者の規模と全体像
4. 選挙人登録と投票
5. 技術面での革新
6. 政党
結語
2022.09.06 一般公開に切り替え