連載パナマ・レポート28:ルベン・ロドリゲス 2022年8月分 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載パナマ・レポート28:ルベン・ロドリゲス 2022年8月分


連載パナマ・レポート29: ルベン・ロドリゲス 2022年8月分

執筆者:Ruben Rodriguez Samudio(北海道大学法学研究科研究員・パナマ共和国弁護士)

I.政府

A.交渉テーブルの現状

7月上旬、パナマ国民による政府への不満が高まり、教員、作業員、医療従事者、先住民族、およびその他の社会的な団体が参加した猛烈な抗議デモが行われていた。これらのデモに対し、政府はデモを起こした市民グループとの交渉テーブルを設け、ガソリン、食材価格の凍結等様々な約束をした。食材価格について、政府は最低限必要な食材(canasta básica de alimentos)価格を30%引き下げる決定をした。しかし、食材価格の凍結命令は、あくまでも販売価格を決定するものに過ぎす、スーパーなどの企業は、対象となった商品を販売する義務がないため、食材が不足している。また、一部の食材は、農家から直接購入し、流通を担当している農業マーケティング研究所(Instituto de Mercadeo Agropecuario、IMA)が開催する市場にしか販売されていない。

食材不足の問題について、農家から直接購入し、流通を担当している農業マーケティング研究所(Instituto de Mercadeo Agropecuario、IMA)が注目されている。8月21日に交渉テーブルに参加したIMAのカルロス・モッタ研究長は、食材不足に関する市民グループの質問に対して、IMAの人手不足を理由として、流通に対応できないと答えた。これに対して、市民グループが相次ぐ批判をしたため、モッタ研究長は突然交渉テーブルから退去し、更なる批判を招いた。これに対して、市民グループはモッタ研究長の辞任を求めている。

さらに、消費者および競争保護庁(Autoridad de Protección al Consumidor y Defensa de la Competencia, ACODECO)が7月13日から8月中旬の間に行った調査によると、対象となった1,900企業中、92%(1,823企業)が価格の凍結を適用したと分かった。命令に違反している企業には合計約100,000ドルの罰金が科されている。

 また、政府は、秩序不安化の一つの原因である医薬品価格に対して、170常用薬品一律の30%値下げを命令した。この命令は、製薬会社から薬局までを対象としているが、薬局連合会が反対し、対象となった170薬品の販売停止、および一時的な閉店を行った。さらに、政府は、薬局が製薬会社から直接薬品を購入できるように薬剤師会を規制する1963年の法律を改正する法案を提出すると発表した。

 さらに、政府が交渉テーブルで公務員数の10%削減をしたにもかかわらず、国会のスタッフが増加し続けている。2022年4月時点では5,650人であったのに対して、6月には7,809人となり、その内、約5,200人が契約社員であった。2022年1月から6月の間、国会の人事費用は約55,000,000ドルとなったため批判の声が上がっている。

II.経済

A.労働環境
 
労働局は、2022年1月から8月の間、137,308件の新規労働契約(男性96,341人、女性40,967人)が登録されていると発表した。契約社員は67,583人、正社員は33,793人、業務委託契約は、35,932人である。新型コロナウィルスによって失業率は最大18.5%(2020年9月)まで上がったが、現在の失業率は9.9%となり、去年10月と比べると2.4%減少している。