連載エッセイ186: 新井賢一「南米コロンビア・雲と星が近い町から」その5 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載エッセイ186: 新井賢一「南米コロンビア・雲と星が近い町から」その5


連載エッセイ 183

「南米コロンビア・雲と星が近い町から」その5
世界文化遺産の古都が残る港町、
コロンビア・カルタヘナ

執筆者:新井 賢一(Andes Tours Colombia代表 ボゴタ在住)

8月の港湾視察ガイドに続き、9月は日本から観光で来訪されたご夫妻のフルアテンドガイドの為再び港町カルタヘナに出張しました。偶然とはいえ首都ボゴタから連続して出張ガイド業務という事で、コロナ禍の影響が徐々に薄らいできている事を実感しています。

カルタヘナへは首都ボゴタから空路約1時間30分です。南米からリマ、中米各地やメキシコシティ、アメリカからはニューヨーク・フォートローダーデール・マイアミなど、そしてヨーロッパからはマドリードやアムステルダムとの間に空路ルートがあります。年間を通じて暑い土地柄ですので、例年ですと北米やヨーロッパが冬の間は観光客が大挙して訪れる土地柄です。

晴れ渡った日のカルタヘナ湾です。1500年代にスペイン人達がこの地を統治し始めてから長い年月が経ちます。南米大陸各地から集められた金銀財宝はここカルタヘナから船で本国スペインに運ばれ、その財宝を狙った海賊達が右画像の右側に位置するカリブ海から襲ってきたという歴史があります。カルタヘナは今では国際港湾都市にもなっており、カルタヘナ港には日本の豪華客船・飛鳥IIを含め世界一周クルーズ船なども数多く寄港し、一時下船の後市内に繰り出すツアーも催行されます。多い日には一度に3,000-5,000人のクルーズ船乗客が大挙してカルタヘナ市内を訪れて観光をする事もあります。

カルタヘナ湾内にはコロンビア海軍大西洋方面艦隊総司令部があります。基地には艦船や潜水艦、そして運が良ければ海軍練習帆船「グロリア号」の姿を見る事も出来ます。グロリア号は日本にも寄港した事があります。美しい姿ですね。

1984年に世界文化遺産として登録されたカルタヘナの旧市街地区は約4km四方の砦に囲まれた古都です。コロンビア国内で最も外国人観光客が訪れる国際観光都市であり、スペイン植民地時代の建物が今に残る風情ある町です。この日は偶然クラシックカーの姿があり、古い建物と見事に調和していました。日本から「北中南米5カ国周遊16日間の旅」で来訪されたご夫妻、そして自分もこのクラシックカーの姿には驚きました。ちなみにクラシックカーと言えばキューバの首都ハバナが有名ですが、実はコロンビアもマニアの目が点になるほどクラシックカーが未だに残っている国であり、キューバと異なるのは所有者自身がマニアの為ピカピカに磨き上げられている事です。

前述のクラシックカーも関連していたのですが、これも非常に珍しい光景でおそらく相当の大金持ちと思われるカップルが民族舞踊団を使って出席者と共に小道を練り歩き、大聖堂で結婚式を挙げていました。私自身カルタヘナで相当の回数ガイドをしましたが、このような光景は初めて見ました。ちなみに年間を通じて暑いカルタヘナでの正装は男女共に「上下ともに白」とされています。

カルタヘナの世界文化遺産は前述の旧市街地区の他、付近にある南米大陸最大規模の「サン・フェリペ要塞」も含まれます。元々あった小高い丘を基礎に作られたサン・フェリペ要塞からは旧市街地区を含めカルタヘナの町を一望する事が出来ます。要塞内部は侵入してきた海賊達を迎撃する為の迷路も作られていて、当時のひっ迫した状況を感じ取る事が出来ます。

カリブ海に面したカルタヘナでは新鮮な魚介類を味わう事が出来ます。カリブ海の魚というと熱帯系のイメージですが、ここでは鯛・カンパチ・アジ・さわら・スズキ・キハダマグロ・ロブスター・タコ・エビ類・大粒の牡蠣など様々な魚介類が揚がってきます。市内には漁師達が沖合での漁の後に揚がった魚介類をその場で販売する「浜市場」があります。これらの海産物を使った料理など、国際観光都市カルタヘナでは食の楽しみもあります。

夜明け前と夜のカルタヘナ湾です。晴れた日の明け方は市内で一番高い「ポパの丘」あたりから朝陽が昇り、夜のカルタヘナ湾の景色も素晴らしいです。南米大陸最北の国コロンビア、そして歴史ある港町カルタヘナ、是非とも御来訪下さい。