連載エッセイ187: 相川知子 「アルゼンチンで日本人が気をつけたいマナー」その4 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載エッセイ187: 相川知子 「アルゼンチンで日本人が気をつけたいマナー」その4


連載エッセイ184

「アルゼンチンで日本人が気をつけたいマナー」その4

執筆者:相川 知子(スペイン語通訳者、異文化コミュニケーター、在ブエノスアイレス)

「予定時間より早く到着しない」

アルゼンチンでは何でもぎりぎりだ!と憤慨している人、郷にいっては郷に従え、はローマに行けばローマ人のようにしろ、とスペイン語で言うように、アルゼンチン人のようにしますと、怒りが収まります(笑)場合にももちろんよりますが、午後8時にお集りください、というパーティも開催者は午後8時半ぐらいに人が集って来るのをちゃんと知っています。ですから、集ってもらって、午後8時半以降(ひょっとしたら午後9時)に開会式を行うのです。家庭訪問も同様です。午後8時に夕食にと言われたので、午後7時55分にチャイムをならしたら、5分後、カーラーをつけたままの奥さんが出て来たという実話もあります。また午後8時に夕食ですからと言われて時間通りに到着したら、着いたらやっとアサードの火をつけ始めたということもあります。

 逆にもう予定ばっかり作って、肝心の現場で変更するのが日本式です。そうすると、何故変更するの?それなら現場まで決めなければいいじゃない、と考えるのがアルゼンチンスタイルです。

 どちらにしても待ち合わせの時間、特に食事などの集まりやオープニングパーティには余裕を持って行く必要は全くありません。その時間どおりか少しすぎで大丈夫です。だから、午後8時と言われたら、8時から8時15分に着けば問題なく、実際は8時半までは少なくとも待たされると思いましょう。でも、それを7時45分ならまだしももっと前からいけばさらに始まるのが遅くて、ただでさえ日本人には遅いスタートには疲れます。

 日中の仕事のミーティングなどは比較的時間通りです。大きなビルなどは受け付けで身分証明書提示、入力してもらって入場者登録などを作ってもらったりと手間がかかります。食事時間の近くになる12時から14時ぐらいの間はエレベーターも込んで、時間がかかることもありますので、その辺は最低15分ぐらい考えて行ってもいいでしょう。

 ただし、やはり日本的に早めに着いてしまうこと多いでしょう。オフィスの前で、5分前でしたら、せめて、5分は待ってあげて、それから、受付にお願いすると、相手をあたふたさせません。またもちろん時と場合にもよりますが、5分、10分程度遅れるのは、遅刻にならないこともしばしばです。それをわざわざ電話などで連絡するのも相手には分かりきっていることなので必要ないし逆にその前に済ませようとしていたことへの妨害になります。アルゼンチン式に、やーービルの下の受け付けで手間をとりましたね。写真を撮る機械が突然フリーズして困りましたよ。受け付けはのんびり対応で遅れてしまいました、時間にはちゃんと下にいたんですけれどもね、とちょっぴり責任転嫁のご挨拶をするとアイスブレイクになるでしょう。

 ですから、当地での仕事ミーティングのアジェンダ(予定)も余裕を持って、相手が別のミーティングで遅れて来ることもありますし、午前一つ、午後2つこなせれば1日十分でしょう。と、心の中で思っていますが、短い日本からの滞在の方々を同行するときには、午前中2軒、午後4軒のために運転手を少し焦らし、受付をささっと済ませることができるように努力しております。

 本当はミーティング終了後、軽いお話しでもしたほうがお互いに親しみがわいたり、本音がでてきたりするんですけれどもね。もっとも。最近は比較的時間通りに物事が振興するようになったのはバーチャルミーティングなどのおかげでしょうか。アルゼンチンも少しは変化しています。