連載パナマ・レポート30:ルベン・ロドリゲス 2022年9月分 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載パナマ・レポート30:ルベン・ロドリゲス 2022年9月分


連載パナマ・レポート30: ルベン・ロドリゲス 2022年9月分

執筆者:Ruben Rodriguez Samudio(北海道大学法学研究科研究員・パナマ共和国弁護士)

I.政府

A.バレーラ前大統領とマルティネリ元大統領の公訴

リカルド・マルティネリ元大統領(2009年―2014年)とフアン・カルロス・バレーラ前大統領(2014年―2019年)の公訴提起は、9月12日に再開した。2014年よりブラジルの連邦警察の「オペレーション・カー・ウォッシュ」(ラバジャット)刑事調査の結果として、アメリカ、アルゼンチン、ブラジル、パナマ、メキシコ、ペルーの政治家を巻き込んだ、中南米史上最大の汚職事件を暴いた。以上の汚職行為は、マルティネリ政権およびバーレラ政権において行われたため、大統領が刑事調査の対象となった。

その中で、バレーラ政権はブラジルの大手の建設会社オデルブレヒト社から賄賂を受け、パナマ国内の建設契約を与えたと疑われている。パナマ検察は、ラバジャット事件の調査結果を受け、自ら取り調べを行い、バレーラ前大統領のいとこである在韓国パナマ大使館のハイメ・ラソ前大使は、アメリカの銀行を利用し、2009年選挙活動の寄付金として、オデブレヒト社から70万ドル、最終的に600万ドルを受け取ったと主張している。

2019年11月にバレーラ前大統領が紛失した携帯電話と思われる個人メッセージが、インターネット上に漏洩した「バレーラ・リークス」として知られ、メッセージの中、元検事総長のケニア・ポルセルはバレーラ前大統領から指示を受け、オデブレヒト事件の調査に影響を与えようとしたことが明らかになったため、2020年1月に辞任した。

また、バレーラ前大統領は2017年に台湾と外交関係を断ったが、「バレーラ・リークス」の漏洩によって中国政府からパナマ政府へ1億4300万ドルの寄付があったことがわかった。オデブレヒト社から受け取った寄付は中国の銀行に振り込まれた疑いがある。

この事件においては、マルティネリ元大統領とバレーラ前大統領を含めて被告人49人と弁護士18人が参加している。

B.LGBTの権利について世論調査

統計局が行った多目的世論調査によると、パナマ人の57%はLGBTの人には他の国民と同じ権利があると思っている。にもかかわらず、国民の77%は同性婚および同性のパートナーシップ、ならび国民の80%は、同性愛のカップルによる養子縁組に反対している。さらに、国民の76%は、いかなる場合においても妊娠中絶できるようにする法律改正に反対している。現在、パナマ法では、強姦、胎児の障害、または母親の命に危険がある場合のみ妊娠中絶は認められている。このような場合、妊娠2か月以内に行われなければならない。近年、未成年者妊娠が増加して、年1万人が妊娠している。

II.経済

A.パナマ運河の予算
パナマ国会は、9月28日、パナマ運河の2023年度(2022年10月1日-2023年9月20日)予算を可決した。可決された予算において、2023年度の収入予測は46億5290万ドル(前年同期比10%増)、政府への献金は、25億4460万ドルとされている。ただ、2023年における運河を通航する荷物のトン量は5億1030万トンとされ、前年同期比2.8%減少すると予測されている。パナマ運河局は、9月13日にパナマ運河のガトゥン閘門で洪水があって、2時間15分の通航妨害が発生したと発表した。

III.外交

A.モイネス外務大臣公式訪問
 エリカ・モイネス外務大臣は、故安倍晋三国葬儀に参例するため、日本に公式訪問を行った。モイネス外務大臣は、日本の林外務大臣と二国の友好な絆を断言しつつ、両国の今後の関係、および国際社会の有様について会談をした。モイネス外務大臣と林外務大臣が触れた話題の中、パナマ人ビザ手続き免除を改めてお願いした。

IV.パナマ・コスタリカ商事紛争

9月28日にコスタリカのトバル外国貿易大臣は、現在、免除されているパナマ産の商品に対し課税すると述べた。パナマとコスタリカの商事紛争の悪化は2020年に遡る。2020年5月にコスタリカ政府は、新型コロナウイルス拡大防疫対策として、一時的にパナマ発の国際運送トラックの入国を禁止し、これに対してパナマ政府は報復措置として、コスタリカ発トラックの入国を拒否した。

同年6月に、パナマ政府は、必要な書類が期間内に提出されなかったため、コスタリカの乳製品および食肉処理場の25工場の衛生許可を更新しないことを発表した。当時、パナマで発売された 乳製品の40%はコスタリカ産で、パナマ食事衛生局(AUPSA)のラウル・サルセド局長は、2014年以降、衛生許可に必要な設備の検査は行われていないと述べた。

コスタリカ政府は、パナマ政府の衛生許可更新拒否が貿易障害に該当するとして、世界貿易機関(WTO)に通知し、2021年1月にコスタリカ政府は、世界貿易機関(WTO)でパナマの貿易障害措置に反対し提訴した。パナマ政府は、同年6月に、コスタリカの食肉処理場の25工場の衛生許可の更新を断った。