ウルグアイとわが国は2021年に外交関係開設100周年を迎えた。日本との往復に5日間もかかり、サッカーなど断片的な情報しかないウルグアイについて、外務省のウルグアイにも在勤したスペイン語圏の専門家の編者を中心に11人の執筆者が、概要、歴史、政治、経済、国際関係、社会、文化、日本との関係について広く解説している。
国名に東方(Oriental)がつく由来となったブラジルからの独立の歴史、20世紀初頭に二度にわたって大統領を務めたバッシェが唱道した改革の影響、都市ゲリラ「トゥパマロス」の軍事政権への挑戦、政党政治制の試行、ムヒカ元大統領など「考える政治家」などの政治、主要産業の一つ林業発展への日本の協力、労働者保護を重視した労使関係などの経済、ブラジル、アルゼンチンという大国に挟まれ英米やアジアとの巧みな国際関係、早くから社会福祉が整備してきた移民国家の社会、多彩な人材を輩出している文学やフォルクローレ、スペインのサルスエラの流れを汲むムルガ、ユネスコの無形文化遺産に登録されたアフリカ系リズムとダンスのカンドンベなどもある多彩な文化、第二次大戦前とその後の日本との外交関係、さらに東日本大震災時の約2トンのコンビーフ缶詰等の支援があったこと、東京国際フォーラム設計コンペでウルグアイ建築家が選ばれたことなどの日本との関係に至るまで、満遍なくウルグアイの姿を知ることが出来る。
〔桜井 敏浩〕
(明石書店 2022年7月 336頁 2,000円+税 ISBN978-4-7503-5287-9)
〔『ラテンアメリカ時報』 2022年 秋号(No.1440)より〕