中米のコスタリカで昔から言い伝えられてきた伝説や民話集(コスタリカ国立大学出版局刊 1995年版)を全訳したもので、鳥や火山などの自然についての「土地の伝承」31話、スペインの植民地にされキリスト教の影響も含めた「宗教伝説」17話や戦争で一度死んで蘇生したと語る男の話など「怪異譚」48話が収録されている。スペイン人征服者到来より遙か昔の伝承から、征服者やその後の海賊の襲来以降のコスタリカ人の血肉をなっている伝説集大成の日本語による初めての紹介である。
1979年に青年海外協力隊員としてコスタリカ大学に派遣されその後国際協力機構(JICA)教育専門家、新潟産業大学教授を務めた訳者がコスタリカ人の夫人はじめ周囲の人たちの協力を得て訳出、日本での刊行にこぎ着けた労作。
〔桜井 敏浩〕
(山中和樹訳 国書刊行会 2022年5月 396頁 3,000円+税 ISBN978-4-336-07348-8)
〔『ラテンアメリカ時報』 2022年 秋号(No.1440)より〕