『帝国の動向』 フェルナンド・デル・パソ | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『帝国の動向』 フェルナンド・デル・パソ


 メキシコの生粋のインディオから大統領となったベニト・フアレスが、1861年に対外債務の支払い停止を宣言したことからフランス皇帝のナポレオン三世は軍隊を差し向け、1964年にオーストリア大公マクシミリアンをメキシコ皇帝に送り込んだ。同道したベルギー王女のシャルロット妃を主人公に、フランスの介入、帝政メキシコの成立の後を語らせる。フランスの撤兵による帝政維持の危機にシャルロットは欧州各地で支援を働きかけたが、次第に精神を病み、その間共和派の攻撃で帝国は崩壊、1867年にマクシミリアンは銃殺刑死した。シャルロットは母国のバウハウト城に幽閉され、生涯メキシコとフアレスを恨み続け1927年に86歳で没したというのが史実だが、メキシコでのマクシミリアンとの日々の回想とバウハウト城でシャルロットが今は亡きマクシミリアンへ語りかける独白が交互に変わる構成で、大胆な憶測を交えた小説とグロテスクな史実それぞれの魅力を巧みに引き出している。
 著者は1935年にメキシコ市で生まれ、2018年にグアダラハラで亡くなったメキシコを代表する作家。

〔桜井 敏浩〕

(寺尾隆吉訳 水声社 2022年1月 872頁 5,000円+税 ISBN978-4-8010-0547-1)〔『ラテンアメリカ時報』 2022年 秋号(No.1440)より〕