【季刊誌サンプル】ラテンアメリカを取り巻く国際秩序の変移 ロシアによるウクライナ侵攻で激変する国際秩序―ラテンアメリカに及ぼす経済的・地政学的影響 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

【季刊誌サンプル】ラテンアメリカを取り巻く国際秩序の変移 ロシアによるウクライナ侵攻で激変する国際秩序―ラテンアメリカに及ぼす経済的・地政学的影響


ラテンアメリカを取り巻く国際秩序の変移
ロシアによるウクライナ侵攻で激変する国際秩序―ラテンアメリカに及ぼす経済的・地政学的影響

桑山 幹夫(ラテンアメリカ協会ラテンアメリカ・カリブ研究所シニア研究員)

本記事は、『ラテンアメリカ時報』2022年秋号 (No.1440)に掲載されている、特集記事のサンプルとなります。全容は当協会の会員となって頂くか、ご興味のある季刊誌を別途ご購入(1,250円+送料)頂くことで、ご高覧頂けます。

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ロシアによるウクライナ侵攻で激変する国際秩序-ラテンアメリカに及ぼす経済的・地政学的影響 桑山 幹夫(ラテンアメリカ協会ラテンアメリカ・カリブ研究所シニア研究所員)

はじめに

ラテンアメリカ・カリブ(LAC)諸国は過去2年半余り、コロナ禍、中国の景気後退、FRB(米連邦準備理事会)による利上げなど、そのどの一つをとっても対応が相当に困難な事象なうえに、今次のロシア・ウクライナ戦争の煽りを受け、複雑な国際政治・経済環境に置かれている。

LAC地域はコロナ禍の影響を最も強く受けている地域であり、2021 年下半期 から加速したエネルギー価格や食料価格の高騰は、既に上昇基調にあった物価をさらに押し上げ、金利上昇を招き、経済成長を停滞させる。

一方で、この戦争には、国際社会および LAC 地域における米・中・ロ間の「陣営作り作戦」を複雑にするという地政学的側面もある。LAC 指導者のなかには、中国や ロシアと連携することで自らの立場の強化を図ろう とする首脳もいる。

本レポートは、筆者が本年7月 と9月に執筆した2本のラテンアメリカ協会研究所レポート(桑山 2022a、2022b)を基に、国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)が 2022年6月(ECLAC 2022a)と8月(2022b)に発表した報告書に言及しながら、ロシア・ウクライナ戦争がLAC地域に与える影響について、経済的および地政学的視点から考察する。

経済的影響

ロシア・ウクライナ戦争は、物価と金利の上昇から生じる世界経済の成長鈍化をもたらし、LAC地域に甚大な影響を及ぼしている。

LAC諸国の主要貿易相手国・地域である米国、中国、欧州の経済が後退しており、外需が大きく落ち込めば、インフレと景気後退が同時に進むLACのスタグフレーションが加速する。だが、この戦争が LACに与える影響の程度は国によって異なる。

一次産品輸出国の中には輸出 収益や政府歳入の増大の恩恵を受けるところもあるが、景況感の悪化、物価の上昇、国内外の金利上昇、自国通貨安により、プラスの経済効果が打ち消される燃料や食料の純輸入国がLACには少なくない。

状況によっては、物価上昇と食料不足が広範な社会不安を招く可能性もある。多くのLAC諸国でインフレ率が中央銀行の目標値を大幅に上回り(表参照)、LAC地域の高債務国にとって債務の再編や資金調達へのアクセスが制限されるだけでなく、対外借入総額に占める変動金利債務の割合が高い国々に大きな影響が及ぶ。

金融当局がインフレ対策として金融引き締め政策を継続する中、現金給付、食料または現物給付といったコロナ禍関連の財政支援が撤廃される局面にあるため、財政・金融政策は短期的には景気後退に傾くと予測される。

LACでは、コア・インフレに含まれない食料や燃料価格の上昇が際立っている(ECLAC 2022b)。食料や燃料を主要投入財とする業種だけでなく、貯蓄が少ない低中所得世帯にとって多大な負担となる。

コロナ禍からの回復が遅れる中、世界で最大と言われるLAC 地域の所得格差がさらに拡大し、社会不満につながる可能性がある。物価高対策の一環として補助金を支給するよう政府に圧力を課す国もある。