【季刊誌サンプル】米州サミットの成果と課題 駒崎 弘(在米日本国大使館 一等書記官) | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

【季刊誌サンプル】米州サミットの成果と課題 駒崎 弘(在米日本国大使館 一等書記官)


米州サミットの成果と課題

駒崎 弘(在米日本国大使館 一等書記官)

本記事は、『ラテンアメリカ時報』2022年秋号 (No.1440)に掲載されている、特集記事のサンプルとなります。全容は当協会の会員となって頂くか、ご興味のある季刊誌を別途ご購入(1,250円+送料)頂くことで、ご高覧頂けます。

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米州サミットの成果と課題 駒崎 弘(在米日本国大使館 一等書記官)

本年6月8日から10日にかけて、第9回米州首脳会議(以下「米州サミット」という)が米国ロサンゼルスで開催された。サミット直前には参加国の問題で揺れたが、ラテンアメリカ(中南米)の抱える課題に地域全体で対処すべく幅広い分野で各国のコミットメントが示された。本稿では現地に出張した様子も含めて今回のサミットについて報告したい。

米州サミットの歴史的意義

米州サミットは、おおよそ3年おきに開催される、米州の各国首脳が一堂に会する同地域最大の国際会議である。第1回は1994年に米国のフロリダ州マイアミで開催された。それまで米州機構(OAS)によりアドホックに開催されていた会議を、民主主義と自由貿易の原則に基づくものとして制度化したことが起源とされている。第1回サミットでは、米州諸国の対等のパートナーシップの下、民主主義と人権の尊重、米州自由貿易地域(FTAA)の創設などを柱とした共同体が構想された。最終的にFTAAは実現しなかったが、その後の米州における貿易関係の発展に繋がったといわれる。

米州サミットは、歴史的な外交の舞台にもなった。米国が主催した第1回サミットでは、OASから脱退していたキューバのみが招待されなかった。その後もキューバは除外され続けたが、オバマ政権時代に転機を迎える。第6回サミットでは、キューバの参加に中南米諸国の多くが賛同する中、米国は難色を示し、米州ボリバル同盟諸国がキューバ不参加の場合にはボイコットを示唆するなど調整が難航したため、結局キューバの参加は見送られた。2015年の第7回では、前年末に米・キューバの国交正常化交渉の開始が発表される中、パナマがキューバを招待したことに米国内では議会を中心に依然として根強い反対の声が上がったが、最終的に米国政府はキューバ招待への反対を取り下げ、キューバの参加が初めて実現した。サミット会場では米・キューバ首脳会談が59年ぶりに開催されるに至り、その翌年のオバマ大統領のキューバ訪問に繋がった。

前回2018年のサミットでは、当時のトランプ大統領がシリア情勢を理由に出席を見送り、初めて米国大統領が米州サミットを欠席することとなった。中南米諸国からは、米国の欠席は中南米への無関心の表れと受け止められた。また、中心議題の1つであったベネズエラ問題では、16か国による共同声明が発表されたものの、各国間の意見の相違も浮き彫りになった。

第9回サミットへの期待

今回のサミットは、米国が28年ぶりに主催することもあり、米国が再び中南米の諸問題に関わっていく姿勢を打ち出し、米州全体が連帯して難局に対処していくことを確認する機会となることが期待された。

中南米における課題は山積している。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により打撃を受けた経済はいまだに完全な回復には至っていない。2022年1月に国際通貨基金(IMF)が発表した中南米・カリブ海地域の経済成長率の見通しは2.4%にとどまる一方、長引くコロナ禍の影響で特に脆弱な国々における貧困や格差問題は一段と悪化した。人々の不満は、ボリビア、ペルー、ホンジュラス、チリなど近年の国政選挙における左派政権の誕生にも表れている。中南米からは、米国が主導する今回のサミットで、こうした問題の進展を期待する声が多かった。

他方、ホスト国である米国としては、いくつかの理由から、サミットを成功させる必要に迫られていた。「米国の裏庭」と呼ばれる中南米であるが、近年、米国の影響力の低下はたびたび指摘されている。その背景の1つに、中国の存在がある。重要な鉱物と食料資源の供給源であり、GDP約5.5兆ドルのマーケットを有する中南米は、中国にとって魅力的な貿易相手である。中国は、特に2000年以降、一帯一路や貿易の拡大等を通じて影響力を強めてきた。世界経済フォーラムによれば、2000年から2020年にかけて中国との貿易額は26倍に増加しており、2035年までに7000億ドルを超えるとの予測もある。また、中南米・カリブ海地域には台湾承認国14か国のうち8か国が集中しており、中国はこれらの国に様々な方法でアプローチしている。2021年12月にはニカラグ