舩木 弥和子(JOGMEC 主任研究員)
小口 朋恵(同 課長代理)
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ロシア・ウクライナ問題がラテンアメリカ資源国に及ぼした影響 舩木 弥和子(JOGMEC 主任研究員)・小口 朋恵(同 課長代理)
2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、原油・天然ガスのほか、一部の金属価格の上昇を引き起こし、欧州諸国に天然ガスを供給するパイプラインがロシアによって一時的に止められるなど、原油やガスの供給に対する懸念が高まった。金属では、エネルギー価格の上昇によって、製錬プロセスにおいてエネルギーを多く使用する亜鉛の製錬が止まったり、減産する等したが、この影響を直接的に受けたのは主に欧州諸国と見られ、ユーラシア大陸から遠く離れたラテンアメリカにどのような影響があったかは、あまり報道されていない。しかし、この侵攻は、世界の石油・天然ガスのサプライチェーンが大きく変動する契機となったことが見えてきた。一方、金属においては、一見何もなかったように見えるが、世界は繋がっており、直接的ではなくとも影響が及んでいたようである。ラテンアメリカ諸国とロシアとの関係も踏まえながら、ウクライナ侵攻がラテンアメリカの資源国に及ぼした影響について、見ていくこととしたい。
ラテンアメリカの産油国の中で最も存在感を示してきたのはベネズエラだ。3038億バレルと世界第1位の確認埋蔵量を誇っている。しかし、チャベス前政権以降の失政や米国の経済制裁により、1998年には345万バレル/日(b/d)であった原油生産量が65万b/dに激減してしまった。
ベネズエラにとって代わったのが、ブラジルだ。ブラジルはプレソルト(岩塩層下の原油、ガスを貯留する炭酸塩岩)での油田開発で300万b/dまで増産、ラテンアメリカ最大の産油国にのし上がった。2004年には383万b/dを生産し、ベネズエラと覇を競っていたメキシコは、生産量が200万b/d弱に減少しており、ロペス・オブラドール政権下で外資参入が制限されたことで、その傾向を強めている。
この3か国に、アルゼンチンとコロンビアを加えた5か国が、ラテンアメリカの原油生産量の88%を生産している。これらのラテンアメリカ産油国は、ロシアによるウクライナ侵攻により原油・天然ガス価格が上昇し、原油やガスの供給に対する懸念が高まったことで、どのような影響を受け、対応をとったのだろうか。ベネズエラに関しては、米国が原油供給量の増加を目指し、制裁の緩和に向けて動き出した。2022年3月、米国はベネズエラと、制裁緩和やベネズエラの原油増産に向けて協議を開始した。5月中旬には、米