『山と電波とラブレター』 吉川 真司 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『山と電波とラブレター』  吉川 真司


大学在学中にメキシコ南部オアハカ州に留学し、国内外で仕事をした後に現在はメキシコの日系食品企業に勤務している著者が、2018年のクリスマス休暇で南部チアパス州の小さな村サン・イシドロ・チチウィスタンに泊まりに行き、広大なエバーグリーン牧場で過ごした4連休の日々を綴ったもの。最寄りのトゥクストラ・グティエレス空港から乗り合いタクシーで牧場に向かい、この土地が気に入って住み着いたフランス人女性と米国人男性のカップルが経営する観光牧場でコテージに泊まり、散策を楽しみ乗馬を習い馬で森を巡るツアーに参加、世界各地から来た同宿者たちと交友する。書名はこの牧場周辺には携帯電話の電波が届かないが山の中に電波が届くスポットがあること、女主人が画いてくれた電波探索地図の裏にいかにもティーンエイジャーらしい女子が画いたラブメッセージが目にとまったことに由来している。クリスマスイブの日、夕食パーティ前のひととき村の少年と自然散策ツアーに行き、巻き寿司を作ってみせ坂本九の歌を披露し、皆でハレルヤを合唱して最後の夜は更けた。著者の撮った写真を交えてのチアパスの牧場への旅の一部始終。

〔桜井 敏浩〕

(パレード 2021年11月 208頁 1,000円+税 ISBN978-4-434-29066-4 )