サンパウロ市内のあちこちで“SOHO(蒼鳳)”という名の看板を見かける。著者が1979年に29歳でブラジルに移住、82年に独立して、24年間でブラジル第2位、年間売り上げ約20億円に至るまで育てた美容室チェーンである。
日本での修行、カリスマ美容師としてもて囃された青年期を経て、ブラジル社会で様々な困難を克服し成功するまでを綴った自伝。ブラジルでの“常識”に反してスタッフを信じることから始め、お客はじめ相手を思う心、自分たちが持っているものを最大限に活用しようという“日本の心”をブラジル人に伝えるのがSOHOの使命と信じてやってきたというが、「ブラジル人たちは、一般的に感性が豊かで創造性に優れているが、それをどうやって表現するかという具体的な手段を知らない」 「集中力はずば抜けて高いが、忍耐が苦手、持続力がない。個人主義のブラジル人が共同体意識をもって仕事をしたら、日本人以上にパワーが出るのでは」など、その間の体験で得た経営ノウハウを、様々な経験を通じて会得した処世訓とともに紹介している。[桜井 敏浩]
(致知出版社2006年10月206頁1400円+税)