カリフォルニアの大学に留学し、マチュピチュを見るつもりで訪れたインカが“世界の臍”と読んだ古都クスコが気に入って住みつき、気がついたら10年が経っていたという著者の、クスコで生活している人でなければ書けない、楽しいエッセィ集。旅行社経営やTVコーディネーターなどのかたわら、アンデス高地先住民の文化習慣などを、『アンデス、祭りめぐり』、『アンデス奇祭紀行』 (いずれも青弓社発行)でも紹介してきている。
暖房機器を使わない住環境での防寒対策、意外に多彩な日常の食事、インカの精緻な石積みの上に日干しレンガを厚く積み上げた家の問題など、海抜3400メートルのクスコでの衣食住環境もさることながら、著者ならではのアンデス先住民の呪術や祭り、生活の中にとけ込んだ慣習は興味深い。[桜井 敏浩]
(千草書房157頁2006年11月1300円+税)
『ラテンアメリカ時報』2006/7年冬号掲載(社)ラテン・アメリカ協会発行