連載エッセイ198:ピーター藤尾「チリの風」その8 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載エッセイ198:ピーター藤尾「チリの風」その8


連載エッセイ195

「チ リ の 風」その8

執筆者:ピーター藤尾(在チリ・サンティアゴ)

「2022年10月31日ー11月6日」

1) ボリッチ動向

今週の話題は年金制度の改善です。現在年金を受け取っている人の72%は最低賃金より低い額とか。同じ金額をためても女性は男性よりもらう年金が少なくなります。それは女性の方が平均寿命が長いからで性による差別をしているのではありません。科学的根拠からです。今回ボリッチが提案したのは、現行の年金積立(給料の10.5%を自動的に引き抜く)の額を6%上げることです。これで貰える年金が大きく増えます。それから、その増加分は現行のAFP民間年金運用会社に渡さず、政府の機関に入ります。一部は個人、残りは共有年金に貯められます。それに関し、新聞に各自が預けた金がどこに行くかわからないのでは市民の同意を得られないと書かれています。

もちろんその他にもいろんなコメントが出ています。AFP会社連合は不公平な改定を認められないとしました。政府機関の手に渡ると、政府はそのお金を好きなように使えるが、それは認められるのかとする声もあります。政府の運営ではコストが安いと言われますが、それは正しいのか間違っているのかわかりません。さらに基礎年金保障がありますが、チリの住民権のある人は年金をもらえるわけで、これを求めてまた不法移民が入ってくると言われます。その人たちはほぼ全員が正規の職に就かず、不法・不正の仕事をしますが、それをいつか正式移民の手続きをして年金を受け取るようになるのを狙うわけです。さて新左翼の過激派は、3年前から政府に要求していたように民間のAFPを閉めて、全部国の管轄にしようとしています。国会でどう結論が出されるかわかりません。同じような政府案はバチェレット、ピニェラの時にも出されましたが、成立しませんでした。
さぁ今回はどうなるかな?

しかし現行のチリ年金システムは世界で高い評価を受けています。上位は欧州の国ですが チリは世界の16位、その下の17位はドイツ、日本は35位です。チリ方式は各自が貯めた基金を運用して年金のベースにするため若者が増えても減っても全く影響しません。日本と違いますね。私はこのシステムが始まった最初の月から利用しています。ピノチェットの仕事ですが、私は好きです。

もっとも今週のボリッチ動向で一番目立ったのは、政治関連ではなく、彼が自転車通勤を始めたことです。彼の自宅からモネダ宮殿まで2.7キロですが、自転車でのんびり通勤を始めました。彼の前後に警察の護衛がついているのでしょうが、楽しそうに通勤してます。新聞の風刺漫画にガソリン代が高くなったので車をやめて自転車にしたのだと描かれました???

1年以上前の話ですが、彼が次の大統領選挙に出馬されますか?と聞かれたとき、私は経験がないから参加するつもりはありませんと答えました。その半年後に、私は今までの経験を生かして大統領になりチリをよくしたいと発言を変えました。それを聞かれると、自分を支える新左翼の力を自分の経験ということができるはずだと軽く逃げました。その新左翼が現在、政治混乱の原因になっているわけですね。ただ彼は当初の方針を変えるつもりはないと言い張っています。

2)下院議会議長

共産党のカリオラが今月からその職に就くはずでしたが、今週、共産党はそれを辞退すると発表しました。3月に現行議長が選ばれ、彼の次ぎに共産党議員が議長に選ばれると合意に達していたのですが、この8か月の間に各党と共産党との関係が悪化し、他党の援護が薄れていったわけです。さて14日の選挙でだれが議長にえらばれるのでしょう。予想では野党(右翼)が与党側のDCなどと手を組んで過半数の78票を確保したとされています。つまり、毎週書かれているように政府側の分裂が目立っているということです。これに対しボリッチは与党側の団結を訴えています。9月の新憲法投票で惨敗を喫しましたが、またこの議長選挙で側近の共産党議員が議長になれず野党側が指導権を握れば恥の上塗りですね。この日曜日、第5州の大統領別荘に各グループ代表と政府関係者が集まりこの議長選にどう対応するか話し合ったとか。新左翼の代表を与党側は推すとしたいようです。

ボリッチとそのグループは自分たちはチリを変える、古い頭の人間が民主化以降チリの政治を統治してきたが、それを新しい考えで大きく変えるのだとしたわけです。それが全く機能せず、市民の離脱は明白です。犯罪、特に麻薬組織の急増など、新憲法とは全く関係なく現行憲法で対処できるわけですが、全くしませんでした。毎月発表されるいろんな機関の市民調査で彼を支持するは急下落です。4年の任期を完了できないだろうとするコメントが出るのも無理はないと言えます。

ところで、ここで少しチリの議会の歴史をまとめてみます。1988年に軍事政権継続可否の国民投票が行われ、僅差で民主化が決定しました。そして最初の選挙で中道左派のグループが大統領を出しました。初代・2代目はキリスト教民主党DCが続き、その後、社会党PSとそこから分かれた民主のための党PPDが2代の大統領を出しました。そのころ、共産党と新左翼はその中道左派グループの近くにいましたが、メンバーに入ってはいません。その後、ピニェラが初めて右翼として大統領につきました。

さて今回の選挙で、その中道左派グループが協力して候補を選ぶことをせず、各党が勝手な動きをしたので、共産党と新左翼の候補に勝てませんでした。そしてその二人の争いで新左翼のボリッチが勝ったわけです。3月の政権開始の時には閣僚や政府高官は多くが共産党・新左翼でした。ところが風が代わり、その二つだけでは上手くいかないことが分かり、中道左派グループから人材を選んでいます。先の内務大臣交代がそのケースです。ボリッチは与党内の合意を図る・進めるとしますが、自分の方針がはっきりしていませんからね。共産党・新左翼は政権運営の経験がないので、口先だけで相手を説得する力がありません。あと3年ボリッチがどの選択をするかははっきりしていますね。

「経済」

1)チリ経済の落ち込み
2021年2月以降初めて、10月はマイナス成長になりました。もう経済停滞がはっきりしてきました。新車の販売が18か月ぶりに対前年で数字が下がりました。

2)銅価格と為替
銅の価格は9月13日以降で最高の3.59ドルに上がりました。するとペソが対ドルで強くなり1ドル948ペソです。銅の価格が上がるのはうれしいですが、どうしてこの状況で上がるのでしょう。不思議です。

3)ジニ係数
貧富の差を図るのにこの指数が使われますが、チリの基本指数(所得ベース)は他国とほとんど同じとされています。ところが政府が関連するとそれが急に悪くなります。なにそれ?と思いますが、北欧などでは、高所得層には高い所得税をかけるので上下の差が縮みます。ところがチリの場合は、それが少ないので所得格差が開いたままとか。高所得層への増税は長い間、論議されていますが、一向に実現しません。ここでボリッチは思い切った方針を立ててほしいもの。そうすると少しは人気が戻りますよ。高所得層への税金が2倍になったら、ボリッチの人気も2倍になるかも。甘いか?

「一般」

1)高校デモ
100年を超す歴史を持つ名門高校INBA高校の前でまた暴力デモ。6名が逮捕されました。そのうち2名は同校の学生、その他は一般人でした。新聞の社説にどうしてちゃんとした処置を取らないのかと書かれました。今年に入って587件の暴力事件が起こっているが3.2%のケースだけ関係者が処罰がされたらしい。つまりほぼ全員に処罰はされていないわけです。

マプチェ問題も同じで倉庫やトラック・重機に放火されました。しかし同地区で森林業などの会社を運営するのは至難の業です。いつまで経営を続けられるか毎日苦悩ですね。経営者だけではなく従業員もそうですが。

2)山火事
また山火事の季節です。既に39か所で山火事が起こっています。
関係ありませんが、大気汚染の問題で2酸化炭素の量がチリは世界平均を超え、ラテンアメリカで最悪とか。悲しい事実です。COP27世界大会がエジプトで始まりました。ニュースに出ますが、チリではそれに関し以前の熱気はなくなりました。

3)テレトン
障害児を援助する機関の費用を集める運動です。年に一度、この時期に行われます。行事の最後は国立競技場で行われます。6万人の観衆の前で国内外のアーティストがショーをするのですが、朝の2時まで続いたらしい。そして集めた金額は目標を超えて373億ペソでした。もっともその多額の基金はテレトン運営者の関係者の懐に多くいくようですが。

4)コロナ問題
今週で一番新規患者数が多かったのは土曜日で8745人。もう毎週その数を増やしています。さらに悪いのは陽性率でその日19%を記録しています。つまりどちらもこの数週間で最悪の数字です。政府も市民も反応していませんが。5回目のワクチン接種が始まっています。今月は70歳以上の人が摂取する権利があるとか。 以   上

「2022年11月7日ー11月13日」

「政治」

1)ボリッチ動向
この木・金曜日に問題のアラウカニア州を訪問しました。初訪問です。その前に国会で南部を特別州に認定し軍隊の駐屯を認めました。さて彼の現場での行動に関し、野党側から大統領は州内の移動をヘリコプターで実施しているが、実情を知るためには車を使うべきだろうという声が出ました。もっとも一部から車でなく自転車で移動すべきだというコメントも出ています。ボリッチは現場で、この州の平安のため委員会を設置したいと発表しました。そして今まで否定していましたが、この地区にはテロ組織が存在するとしました。この発言の後、同州の州知事は、それなら頻繁に国会で特別法案を論議するのではなく、問題解決まで、特別法案を継続させるべきではないかとしました。同州の市民から政権ができて8か月後の初訪問だが、それなりに意味があった。問題はそれらの問題点をどう解決していくか、その計画を明らかにしてほしいとしています。

さてボリッチは国民の安全が最重要項目と発表しました。口で言うのは簡単ですが、それをどう実施していくのかが重要です。これに関し内務大臣が、来週、議員と論議したいとし、その中に野党議員も招待しました。野党は政府案の弱点を探すのが得意ですからその集まりに野党を入れると政府案より精度が上がりますね。さぁどうなるかな、3年前の社会騒乱時、警察を毛嫌いしていたボリッチも今では警察の手を握り、今週、警察に大量のパトカーを与えました。

ところで5年前の前回の大統領選挙で新左翼から出馬したサンチェスがボリッチに拾われてメキシコ大使になりました。彼女もバチェレットのような女性大統領になる可能性があったのですが・・・。ボリッチはその時、彼女の助手のように支援活動をしていました。野党側から、ボリッチはいつものように自分の知り合い・友だちを政府関係の仕事に優遇すると批判されています。新左翼の議員がピニェラはひどかったが、ボリッチはさらに悪いとコメントしています。もう味方からもはっきり批判されています。

さて彼の父親が不正に土地住居を購入したのではというニュースが出ました。ユーゴスラビアから移民してきたおじいちゃんがパタゴニアにチリ政府から土地を寄与され、それをもとに父親がどこかの市長とネゴをしたのでしょうか。何をしてもうまくいかない彼の日常を見ると、このままでは4年間の任期は正常に終えないでしょうね。

2)下院議長の選挙
今週、選挙が行われ、政府の推した新左翼のミロセビッチ議員が選ばれました。つまり政府は面目を保ちました。投票結果は77対73票でしたが、予想と逆転したのは野党側に入っていた人民党の議員の一部が与党側に変更したからです。人民党はそれらの議員を党の指示を守らないとして処罰しました。先の日曜日に第5州の大統領別荘で政府関係者が集まって作戦を練ったとき、野党側の議員で票を取れるのはいないかと一人一人検討したわけです。そして数人が選ばれ、それらとコンタクトし、投票先を変えさせたのでしょうね。新議長のミロセビッチは、すべての野党(右翼)議員が市民へのご機嫌伺い主義とは思えない。ちゃんと話し合いをして正常な議会の運営を進めたいと発表しました。

3)COP27
世界大会が続いています。チリは石炭を使った発電が37%と最も大きな量を占めています。全国に28か所の発電所があります。2040年までにそれをすべて封鎖するとなっています。それを少し数字を変えて大会で発表してはどうでしょう。

「経済」

1)銅価格と為替
1ポンド当たり3・83ドルと最近珍しい高値になりました。このためペソが強くなり893ペソ。来年のチリの経済成長率はマイナスと厳しい予想がされていますが、銅価格がこのレベルを維持すればプラス成長になるはずです。

2)物価上昇率IPC
10月は予想より低く0.5%の上昇でした。過去12か月では12.8%と毎月その数字も下がっています。落ち着いてきたのでしょうか。

3)新車の販売
今、チリではSUVタイプの車が一番売れています。そのタイプの車の今年の販売ですが、上位10車のうち7つが中国製でした。圧倒的ですね。

「一般」

1)暴力デモ
 大統領が訪問すると決まってから、アラウカニア州や隣のビオビオ州で、放火などの事件が相次ぎました。木材会社の車や重機に火をつけるだけでなく、教会や学校にも放火が続いています。マプチェの過激グループは、私たちの領土へ勝手に入ってもらっては困るとコメントしました。以前から書いていますが、チリがスペインから独立したとき、そこはチリ領土ではありませんでした。

 それからいつものように高校生のデモが起き、50発の火炎爆弾が投げられました。高校の校舎の中でもそういう動きが撮影されました。事態を改善しようとする動きがまったくないですね。なぜルールを作ってそれをもとに結論を出すということができないのでしょうか。

2)コロナ問題
先週まで、毎週、新規患者の数が大きくなっていましたが、今週は最大が7791人と先週より少し下がりました。陽性率も17%と少し下がっています。この傾向が続くかな?
この週末に春祭り音楽祭が都内の公園で実施され、3日間、連日35000人の観衆で埋まりました。こうした演奏会が毎週のように行われていますが、コロナ感染の源になっているのでしょうね。違うかな?以  上

「2022年11月14日ー11月20日」

「政治」

1)ボリッチ動向
 APECに参加するためタイに飛びました。初日はカナダ、日本の首相と面談。二日目も何人かの首脳と面談しましたが、一番話題になったのは中国の習近平との面談でした。新聞に大きく報道されました。来年、訪中するらしい。
 さてチリのマスコミには日本首相と面談と報道されましたが、日本のマスコミではそれは全く出てきません。チリの重要性が日本では認められていないのでしょうね。もっともチリの新聞には中国の習近平との面談は大きく報道されましたが、岸田首相の方はほんの
少しでした。ボリッチはその面談について、「チリは世界を必要としている。そして世界もチリを必要としている。チリは世界が正常に通常に進展するよう一層の努力をしたい」としました。さらに付け加えて、「中国首脳と素晴らしい会談を持てた。チリと中国が手を取り合って進むのは両国にとって素晴らしいことだ。来年、彼らの招待を受け、訪中してこの動きを一層堅固なものにしたい」としました。彼は中国がTPP11 に加盟するよう誘っているとか。 ボリッチにすれば中国がチリの明暗を決める国なのでしょう。

もっと銅を買ってくれれば、車をどんどん買いますよ。電動バスはチリでかなり走っていますが、全部中国製ですね。これから中国の属国になるの?前のピニェラも中国の重要さは理解していましたが、中国びったりではありません。アメリカの顔をうかがっていたのかな?その点ボリッチはアメリカの様子を見るつもりは全くないですね。ところで世論調査では風が変わって彼を評価すると言うのが少し増えています。

2)来年度予算
下院で予算案は認められ上院に送られました。成立するかな?新税法が問題になっていますが、チリの場合は、会社のオーナー・幹部への税金は他国に比較して、それほど低くは無いようです。さて先週から下院の議長が変わりました。新左翼の30代の男性です。議員が騒いで、議長の言うことを聞かないので、何度も警告の発言をしますが、議員は聞きません。野党側は役に立たない議長を罷免しようかという声も出ています。

それから野党(右翼)の結束が問題になっています。9月の新憲法是非の投票で反対派が圧倒したわけですが、その右翼の勝利を使って野党側が反政府として統一するのが普通ですが、チリの場合は新左翼・旧左翼が争っているように、右翼側も新右翼・旧右翼が仲良くできません。つまり左右の争いが盛り上がらないわけです。

「経済」

1)経済成長率
 今年の第3四半期は0.3%でした。そのため今年はそこそこの数字で終わるでしょうが、来年の予想数字はマイナス成長だろうというのは変わりません。にもかかわらず、この夏から再度、不法移民が大量にチリに入ってくるだろうと予想されています。チリは不景気でもほかの国よりよさそうとみられているのでしょうか?

2)銅価格と為替
先週は銅価格が大きく伸びましたが、今週は全く逆に大きく下がりました。需要供給の問題ではないのでしょうね。1ポンド3.65ドルでした。そのため1ドル921ペソとペソの価値が大きく下がりました。

3)欧州連盟との自由貿易協定
チリとEUの間で合意に達し、来週調印式がブリュッセルで行われるとか。昨年197億ドルの貿易がありました。関税が無くなれば、その額はさらに増加するでしょうね。

「一般」

1)暴力事件
先週と同じです。高校生のデモでまた火炎爆弾が投げられました。それを投げる白色のオーバーオールを着た学生が、高校の敷地に逃げ込むと警察は中に入りません。警察が犯人を追って高校の敷地に入るのを認めるようにすべきという声が出ています。学校関係者(教師や職員)が、学生を怖がっているという話もあります。そんなことはやめなさいと言うと攻撃されるのかな?
マプチェの放火事件も継続。同じことが起こっています。そこでテロリスト法案が問題になっています。検察から現行法では取り締まりがうまくいかないという声が出ています。それならテロリスト法案を改正する必要があります。もっとも新左翼の中にはテロリストという名前で反政府グループを抑えるのはどうかという声もあります。

2)COP27
すっきりと結論・合意事項が出ないようですが、各国の気候変動対策のランキングが発表されました、チリは6位で、昨年9位よりランクアップ。日本は50位、中国は51位とか。チリってそんなに頑張っているのですか。

3)コロナ問題
 今週の新規感染者数は最近としてはやや少ない一日平均6000名ほどでした。陽性率も少し下がって15%くらい。すごく良くなったわけではありませんが、それほど悪くはなっていないという感じでしょう。ピニェラ政権の時は外出禁止など多くの手が打たれましたが、ボリッチ政権では自由に放置されています。大観衆のコンサートをマスクもしないで実施。それでも患者が増えないのは何故でしょう?ワクチンさえ打てばもうあとは何もしなくても良いのですか?

4)国内線の飛行機
10月の国内線の利用客はコロナ問題前のレベルに戻りました。正常化が進んだのですね。今週、ラタム航空の飛行機がリマで事故を起こし、消防の人に死亡が出ました。このためチリ・ペルー間の便が一時、全部止まり、両国の空港で多くの乗客が困っていました。

5)ビジャリカ火山
南米で最も活発な火山と言われますが、最近また活動が目立ち、警戒警報が出ました。その近くの町プコンは観光地として有名ですが、観光客の数は減っていません。数年前に大爆発したとき付近の地区は火山灰で覆われました。今回はどうかな?以  上

「2022年11月21日ー11月26日」

「政治」

1)ボリッチ動向
タイから戻ってきたばかりのボリッチは今週またメキシコに飛びました。メキシコでの毎日の行事の内容は大統領府のお知らせに書かれています。メキシコとの友好が図れたとボリッチはコメントしました。ただ訪問の目的だった太平洋同盟の会議は中止とか。それはチリ・ペルー・コロンビアそしてメキシコの集まりです。メインの会議が中止なら訪問する意義は無い(減少する)と思えますが、チリにいるより外に出た方が彼には楽しいと感じるのではと思います。中止になったその会議はペルーで行われるらしい。じゃ、彼はまた外遊ですね。

世論調査で今週は彼の人気が少し下がったとか。先週上がって今週下がるというのはほとんど意味がないですね。1%上がっても2%下がっても同じです。今週の数ですが支持するは31%、不支持は61%でした。

検察庁の長官にホセ・モラレスが選ばれました。ボリッチが彼を選んだ理由はそのうち分かるはずです。議会でそれを投票します。新政権になって8か月ですが、ボリッチは政府高官の52%を入れ替えました。ピニェラは同時期で41%だったとか。つまり前政権で選ばれて働いていた高官を入れ替えていくわけですね。

2)新憲法委員会
議会で新憲法に関して会議がされていますが、全く盛り上がりません。世論調査では憲法改正は必要だが焦ることはないとする人が多数とか。土曜日の新聞の経済欄に2ページの特集で渋谷大使の面談が掲載されました。彼はTPP11の専門家ですから日本企業の動きはしっかり把握しています。先の新憲法制定の投票でノーが圧勝したことを日本の企業は評価したとか。

「経済」

1)チリの経済成長率
OECDの発表ではチリの来年の経済成長率はこれまで予想されていたのと同じマイナス成長です。もちろんプロの人が判断に必要な数字を集めて結論を出すのですから間違いは少ないでしょうが。それからアンドレス・べーヨス大学の発表ですが、チリ経済の現状はインフレ・失業率・政府の負債とか多くの項目で2020年以来の最低の状況とか。

2)銅価格と為替
 1ポンド3.66ドルと先週とほとんど同じ。為替は1ドル924ペソと少しペソが下がりました。

「一般」

1)トラックのスト
 幹線道路にトラックが並んで止まり、一車線を抑えました。月曜日から始まり、もう一週間です。ディ-ゼル燃料費の高騰を政府にクレームしているのに全く反応がないからとか。コストが上がった分だけ利益が減少するのでしょうね。それで赤字になればなんのために働いているのかということになります。北部でトラックが襲われ、運転手が殺された事件がありましたが、それはトラック業界だけでなくチリの市民一般の厳しい状況です。
政府はトラック業界にディ-ゼルオイル価格の据え置きなどを提案しましたが、合意に達しないので国家安全法を用いてデモのトラックを排除する方針です。専門家の話ではガソリン価格の高騰は現政権・前政権の責任ではないとしています。

ただチリのガソリン価格はラテンアメリカの中で2番目に高いとか。もちろんこれは政府の税金のためで、それを下げれば価格は自動的に安くなりますが、政府の税収の重要な部分を占めているガソリン税の縮小はできませんね。トラックのストが続くともちろん物流に影響し、北部からくる果物の値段が上がっているとか。北部の地区でガソリンスタンドにガソリンが無くなっているとのニュースも出ています。ボリッチはメキシコからこの件に関しコメントし、政府の言うことを聞かないトラック業界に対し、鉄道網を充実させると発表しました。今まで何人もの大統領が同じことを言って誰もできませんでした。

2)コロナ問題
 先週とほとんど同じで一日の最高患者数は5800人でした。陽性率は毎日15%くらいが続いています。つまり良くもなっていないが悪くもなっていないと言うことでしょう。

3)暴力問題
 マプチェ問題はいつもと同じです。放火の罪で5名が逮捕されました。そのうちの一人はマプチェグループのリーダージャイツルの息子でした。

4)高校生デモ
政治的に抑えようとしないという噂もあります。高校やそこが属する地区の区役所を罰するのは後で影響が出てくるので、できるだけ問題を大きくしないように放置していると言われるわけです。マプチェや高校生デモの問題はルールを決めてそれを守るというのが、単純でやりやすいと思いますが。

5)タダ乗り
3年目の社会騒乱は高校生の地下鉄タダ乗り運動から始まりましたが、まだ公共バスのタダ乗りが続いています。運輸省の発表では今年は40%で、昨年の36%より増加しているとか。どこからその数字が出てくるのかわかりませんが、大変な問題です。私もバスに乗っていますが、その路線のタダ乗りは10%くらいです。路線によって、地区によってタダ乗りする人の数は変わるのですね。しかしそれだけタダ乗りされればバス会社に利益は残りませんね。バス代を上げるという噂は出ますが、市民の反発があるので、政府はその時期を遅くしようとしています。このタダ乗りを防ぐために政府は監査員をもっと使いたいとしています。それでは私のアイデアを伝えます。タダ乗りチェックの監査員を最低賃金で雇用します。タダ乗り客を見つけたら、政府はその人に罰金を払わせます。そこでその罰金の一部を監査官にボーナスにします。で出すわけです。すると最低賃金がたぶんその2倍になって監査員は生き生きと働くでしょう。甘いかな?以   上