執筆者:Ruben Rodriguez Samudio(早稲田大学法学研究科講師・パナマ共和国弁護士)
A.年金問題
社会保険庁は、年金問題に直面する様々な解決方法を検討していると発表した。現在パナマでは、年金制度としては1941年に設立された現役世代が高齢者を支える「確定利益システム」(Sistema de Beneficio Definido)と2005年改正時に設立された加入者の年金拠出の一部が個人投資口座に預けられている「混合システム」 (Sistema Mixto)がある(1)。若年者の保険料を利用できないため「⼀定利益システム」には、月1億8千万ドルが必要で、2030年110億ドルの赤字が発生すると予測されている。
パナマ運河およびコンセションから受け取る歳入の利用、および制度の合併を検討しているという社会保険庁の発表に対して、民間企業および労働組合から批判があった。パナマ企業役員連合会(Asociación Panameña de Ejecutivos de Empresas)APEDEは、運河やコンセションの歳入は、既に他の社会制度に充当されているために反対している。また、二つの制度の合併に関しては、「混合システム」に介入している者の財産流用となると主張している。他方、様々な社会団体と労働組合が「混合システム」 の廃止と、現役世代が高齢者を支える「⼀定利益システム」求めている。
A.貧困指数
国連のラテンアメリカ・カリブ経済委員会(CEPAL)の報告によると、2014年から2021年の間、パナマの貧困指数は18.5%から15.6%、極度の貧困は8.0%から5.7%まで減少したとわかった。ラテンアメリカにおける貧困指数は以下の通りである。
パンデミックに伴う不況によって、民間企業社員の37%が解雇され、33%の労働契約が停止され、失業率は最大18.5%(2020年9月)まで上がった。また、2011年から2021年の間、経済活動人口(15歳以上)は、約40万人増加したにもかかわらず、正規雇用が減少した。同期間では、非公式部門での労働は36.9%から47.6%まで上がった。その結果、国家の歳入は著しく減り、2019年と比べて2020年前半の歳入は約40%減少した。
法律は、政府歳入の赤字がGDPの4%を上回ることを禁止しているため、政府は、赤字を填補するために国債の発行を繰り返している。しかし、法律は国債がGDPの40%を超えないように促進しているにもかかわらず、2022年2月時点では、パナマ国債は、420億ドルまで上がり、GDPの60%を上回っている。
B.ベネズエラ移民の経済的な影響
2012年以降、パナマに移住したベネズエラ人は、約18億ドルを投資しているとわかった。これをもってベネズエラ民間企業を代表するCAVEX(Cámara de Empresarios y Ejecutivos Venezolanos en el Exterior)のオルランド・ソト氏は、ベネズエラ人に新しいビザシステムを要請している。パナマに移民した110,000人のベネズエラの中、約50%は大学を卒業している。また、10%は、会社を設立して、39,000人を雇用している。
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(1) 社会保険庁の改正については筆者の「連載パナマ・レポート ⑪」を参照(パナマ年金制度問題については筆者の「年金制度に及ぼすコロナ禍のインパクト―中米パナマの事例」を参照。