第1部中米・カリブ海ではメキシコのウィチュルなど 7族、グアテマラではキチュなど 2族、ドミニカのカリブ、第2部の南米ではチリのマプーチェと都市のインディオであるチョロ、ボリビアのアイマラ、パラグァイのグアラニー、ペルー・アンデス東斜面のアシャニンカ、ブラジルのパノ系先住民、そしてベネズエラのヒビという、この地域の13カ国・地域に居住する17民族を、17人の文化人類学者が取り上げ解説している。
メキシコ以南のラテンアメリカ、カリブには、現在3000〜4000万人の先住民が居住するといわれているが、それぞれが多くの共同体を形成し、それぞれの地域で異なる歴史をたどり、その結果として現在の姿も大きく異なっている。また、近年はボリビアにおける先住民出身のモラエス大統領の出現に見られるように、先住民運動を指導してグローバリズムと対峙するなど、あらためて先住民族の動向が注目されるようになった。
異なる地域を専攻し、様々な研究テーマをもつ研究者がそれぞれの民族の生き様を活写しており、編者の丁寧な解説も付いているので、大部な本であるが特に予備知識がなくても関心をもった項を拾い読みすれば、それなりに興味深い読み物になっている。
(明石書店2007年1月335頁4800円+税)
『ラテンアメリカ時報』2007年春号 No.1378 掲載