『ひとりぼっちのジョージ —最後のガラパゴスゾウガメからの伝言』 ヘンリー・ニコルズ 佐藤 桂訳  | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『ひとりぼっちのジョージ —最後のガラパゴスゾウガメからの伝言』 ヘンリー・ニコルズ 佐藤 桂訳 


“Lonesome George”とは、古くは欧米の海賊や捕鯨船員に、近代は通りすがりの船や入植者に栄養価が高い食料として捕食され、絶滅したとみなされていた、ガラパゴス諸島のピンタ島に奇跡的に唯一生存していた雄の象亀のことである。亀は島ごとに少しずつ形状等が異なり、ジョージはピンタゾウガメとして区別されている貴重な亜種だが、現在は保護センターのあるサンタ・クルス島のチャールズ・ダーウィン研究所で飼育されている。ピンタ島はもとより、世界中の動物園や個人の所有する個体を調べても、ピンタ島亜種の遺伝子と外見をもつゾウガメは見つかっておらず、野生絶滅種のされている推定年齢80歳のジョージは、まさしくガラパゴス諸島の自然保護の必要性を訴える象徴となっている。

ガラパゴス諸島は、1978年に世界自然遺産に指定され、植民者が持ち込んだ植生を食い荒らす山羊やネズミの駆除、厳重な観光客の入境規制などが行われ、ピンタ島のゾウガメのように在来種がいなくなった所の植生バランスを回復するために、繁殖させた別な島のカメを導入する計画も進められている。一方で、ガラパゴス諸島の環境負荷は、中国料理用のナマコの密漁、依然としてあるゾウガメの殺戮、大型クルーズ船の立ち寄り増などにより、簡単には軽減されない。

本書は、ガラパゴス・ゾウガメのジョージの発見と保護、飼育、繁殖の試みなどに関わった人々のドラマだが、進化生物学を専攻した科学ジャーナリストの著者の、博識と「世界一有名な爬虫類」への情念が感じられる。

(早川書房298頁2007年4月1800円+税)