『日系人とグローバリゼイション −北米、南米、日本』 レイン・R・ヒラバヤシほか編 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『日系人とグローバリゼイション −北米、南米、日本』 レイン・R・ヒラバヤシほか編


ロサンジェルスの全米日系人博物館の企画による、国際日系研究プロジェクトの成果の一つ。グローバル化が日系人のアイデンティティに及ぼした影響について、第1部「グローバル化と日系人アイデンティティの形成」は南北アメリカへの移住と日系人の文化や社会の成立に関する歴史的考察、第2部「日系人アイデンティティの形成」はペルー、ボリビア、パラグアイ等を事例に、日系人コミュニティの形成と相互のつながりを、社会的慣行、家族、宗教、教育、政治、経済の面におけるアイデンティティを分析している。 第3部「日系人アイデンティティの形成阻害」は、ペルー、ブラジル、アルゼンチン等でのジェンダー、日系映画制作者の作品に見る人種やエスニシティ、日本への“デカセギ”現象の経済学的視点からの考察と、その就労問題と子女の教育、日系であっても“外国人”視される中での日本での多文化共生の可能性、ラテンアメリカへの移住者の中で多い沖縄出身者と本州出身の日本人とのアイデンティティを含む諸問題を取り上げている。第4部「回顧と展望」は、3人の在米編者がこれらの論考を分析している。

7ヶ国18人の研究者による20の充実した事例研究中心の考察は、近年の日系社会、在外・滞日日系人の変化を示唆している。〔桜井 敏浩〕

(人文書院2006年6月536頁6000円+税)

『ラテンアメリカ時報』2007年夏号 No.1379 掲載