講演会報告:林 禎二 駐ブラジル日本国全権大使「ブラジル大統領選挙とルーラ次期政権の展望と政策」2022年12月9日 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

講演会報告:林 禎二 駐ブラジル日本国全権大使「ブラジル大統領選挙とルーラ次期政権の展望と政策」2022年12月9日


【演題】ブラジル大統領選挙とルーラ次期政権の展望と政策
【講師】林 禎二 駐ブラジル日本国全権大使
【日時】2022年12月9日(金)10:00~11:30(日本時間)
【共催】ラテンアメリカ協会・日本ブラジル中央協会
【場所】オンライン
【参加者】201名

林大使は2020年より中南米局長、昨年12月に駐ブラジル大使として着任。
講演内容は以下の通り。

1. 選挙結果とルーラ新政権の政権運営

  • 僅差での勝利は地域差と社会階層による国内2極化を反映。
  • ブラジリアで見る限りピンク・タイドではない。
  • 民主主義が成熟している(ボルソナーロ大統領が選挙結果を認めている)。
  • 上下両院議会運営が課題。
  • 政権移行チームは400名以上。労働者党(PT)は3分の1しかおらず、ワーキング・グループは31(将来の省庁の数に対応)。

2. ルーラ新政権の政策(経済・外交分野)

  • 1.経済分野
    • 2023予算のための憲法修正案(PEC)を年内に成立させることが最大の課題。
    • 民営化には反対、但しコンセッションを推進。
    • 改正労働法を第一次ルーラ政権のものに戻す。
  • 2.外交分野
    • 各国はルーラ氏当選に祝意を表す。COP27に参加。米国サリバン補佐官の訪伯。
    • EU・メルコスール自由貿易協定を推進。
    • 第一次ルーラ政権でのマルチ外交、南との連携(BRICS重視)。
    • 貿易量で中国が圧倒的な存在であり、政治的にも関係を深めざるを得ない。
  • 3.日本や諸外国との関係(経済外交を中心に)
    • ASEAN、インドとの関係が日本との関係以上になりつつある。
    • メルコスールの域外関係;アジア、EUとの貿易協定締結・交渉。
    • 12月初めにウルグアイがCPTPP加入を正式申請;メルコスールの対外共通関税が崩れてしまう可能性。
    • ブラジルの気候変動政策
    • 欧米はアマゾン保護をビジネスチャンスとみて、Green Businessに注目(日本はルーラ政権の下でブラジル・コストが上がると懸念)。
    • 日伯カーボン・クレジット覚え書(2022年7月):JCM(二国間クレジット制度)。
    • ブラジルにおける5G入札
    • 21年11月に始まった5Gサービスが22年10月から全州都、連邦直轄区に拡大(スタンド・アローン)。
    • ブラジルにおけるコンセッション・民営化案件
    • 港湾、ハイウェイ、環境資産、都市交通、発電、郵便サービス等

 講演後の質疑応答では、大統領選での2候補の支持基盤、副大統領の政権への関わり方、中国との関係強化とTPPへの影響、新政権と2021年民営化法、日本によるIT開発の可能性、中国リスクと米国との関係、「ブラジル・コスト」、日米伯協議の行方、等の質問が出され、各質問に丁寧にお答えいただいた。また、詳細な説明資料は公開されるので参照されたい。

林 禎二 駐ブラジル日本国全権大使「ブラジル大統領選挙とルーラ次期政権の展望と政策」講演会発表資料