“秘境アンデス”といわれるが、今では紀行、旅行案内、文明史解説等の文献やテレビ番組などでかなりの情報が手に入るようになった。しかし、アンデスがあまりに長大で広いため、その多様な環境、人々の暮らしなどを理解するのは、依然として困難である。
本書は「アンデス高地とはどのようなところなのか」という疑問に答えるべく、文化人類学研究者12人による、現地調査をふまえた総合的な解説書である。
第1章「アンデス高地とはどのようなところなのか」、第2章「高地に花ひらいた農耕文化」、第3章「特異な牧畜文化の展開」、第4章「アンデス高地の民族誌」と、アンデスの自然、歴史、農業と作物、リャマ等アンデス独特のラクダ科動物との関わり、漁業、農牧、商業の生業と宗教などについて詳細に解説している。第5章「アンデス高地」の諸相では、同じく高地での生活を行っているヒマラヤとの比較、アンデス社会の変容を、最後にアンデスのエコーリズムの現況と未来を紹介している。専門家による大部な解説書だが、写真や図表も多用されていて、一般の読者が読んでも分かりやすく、かつ興味深い。〔桜井 敏浩〕
(京都大学学術出版会624頁2007年3月5200円+税)
『ラテンアメリカ時報』2007年夏号 No.1379 掲載