『パナマ運河拡張メガプロジェクト—世界貿易へのインパクトと第三閘門運河案の徹底検証』 小林 志郎 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『パナマ運河拡張メガプロジェクト—世界貿易へのインパクトと第三閘門運河案の徹底検証』 小林 志郎


1913年に完成したパナマ運河は、閘門式であるところから閘室の大きさによる制約があり、そのぎりぎり通過可能なサイズに合わせた「パナマックス」と呼ばれる船型が世界的に使われているが、船舶の大型化にともない早くから拡張ないし新運河の建設が求められていた。1977年にパナマのトリホス政権と米国のカーター大統領間で運河を99年に返還する「新運河条約」を締結、その中で現行運河の容量限界に対処するために海面式運河建設を含む第二パナマ運河の可能性調査(F/S)を両国が行うことも決められ、その後日本もこれに参加して1986年に「パ・米・日3カ国調査委員会」が発足し、1993年に第三閘門運河案を勧告した最終報告書を出した。これに日本政府代表として8年間出向した経験があり、現在パナマ運河拡張プロジェクトについては日本で最も通暁している著者が、その後パナマ運河庁(ACP)が完成させたマスタープラン(2006年4月公開、スペイン語で約500頁)を総合的に紹介し、内容を精査、検証したのが本書である。

プランの主な内容、運河の需要予測、工事資金を調達するための大幅な値上げ案とその新料金政策への疑問、第三閘門の建設計画、閘門開閉で倍増する水量の確保と環境問題等を具体的に指摘している。さらに、第三閘門建設によるパナマ経済やサービス産業、政治などへの影響についての解説も網羅されていて、この巨大プロジェクトを知る上で極めて有用な解説書である。

(文眞堂2007年9月226頁2300円+税)

『ラテンアメリカ時報』2007年秋号(No.1380)より