『マジカル・ラテンアメリカ・ツアー -妖精とワニと、移民にギャング』 嘉山 正太 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『マジカル・ラテンアメリカ・ツアー -妖精とワニと、移民にギャング』 嘉山 正太


2008年よりメキシコに在住し、ラテンアメリカ全域でのTV番組・映画・CMなどの撮影コーディネーター等で飛び回っている著者が見聞、体験したエピソード集。猿の群れに囲まれまとわりつかれたカメラマン、蚊除けが効かない時は気にしないことだというアマゾン河、トマトもレタスも手に入らないのでそれら無しのチキンハンバーガーの代金は銀行振り込みでいいというベネズエラ、星だらけの海抜5000mのチリのアタカマ砂漠、二度の大地震に襲われたメキシコシティ、反政府組織との抗争が終わったコロンビアで元ゲリラ兵の取材、メキシコ北部ティファナの米国境との壁が隔てる家族関係、米国への移民が便乗する“野獣列車”、ホンジュラスの世界最悪のマラス(少年ギャング)の元メンバーへと移民家族のインタビュー、新型コロナウイルス感染症禍の中でのメキシコ生活などを語っている。

ベネズエラへ行って「本当のこと」を見れば見るほど増えてしまう、Aという事実があって後からBという事実を知ったからといってAが嘘だったことにはならない、AとBと両方ある世界なのだということ、星を見つめ過去の光から天空の歴史を見る天体観測所と、軍事政権により殺された家族の遺体を地の果てまで捜す人たちがいるチリの砂漠で感じたことなど、取材を通じての所感も述べられている。

〔桜井 敏浩〕

(集英社インターナショナル 2022年9月 276頁 1,900円+税 ISBN978-4-7976-7417-0 )