著者は1978年生まれで格闘家として名を成したが、現役中から役者、モデル、作家、書道家など、様々な分野で活躍してきた。学生時代にライブ・ビデオで革命家チェ・ゲバラの肖像を見て以来、気になる存在だった。そのゲバラが青年時代に南米大陸を中古オートバイで放浪した旅行日記を映画化した「モーターサイクル・ダイアリーズ」は、自分の中にある何かが旅心をかき立てた。友人を誘い、ラテンアメリカへの旅に旅立つ。
ブエノスアイレス、サンチャゴ、リマとナスカ、イカ、クスコ、マチュピチュ、ボゴタ、そしてカラカスまで来て、次にいよいよゲバラの墓のあるキューバへ向かおうとしたが、手続きを終えた搭乗機に乗り損ない、満席を理由に以後の便の席が取れず、やむなくメキシコ市に行く。トロツキー博物館、トゥーラとティオティワカンの遺跡を見て、米国ナッシュビル経由帰国するまでの見聞、行き会わせた人々、そしてチリの軍事クーデタ、チャベスのボリーバル革命、メキシコでのトロツキーの暗殺、そして地球温暖化問題などに思いを馳せる。
著者の多彩な才能に触れたいファンにはそれなりに魅力のある紀行記だが、ラテンアメリカを多少知っている読者には、現代史や現代社会の見方が一面的で物足りないかもしれない。
(講談社 191頁 2007年9月 1,190円+税)