連載エッセイ205:ピーター藤尾「チリの風」その9 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載エッセイ205:ピーター藤尾「チリの風」その9


連載エッセイ202

「チ リ の 風」その9

執筆者:ピーター藤尾(在チリ・サンティアゴ)

「2022年11月27日ー12月4日」

「政治」

1)ボリッチ動向

エルウィンの像

モネダ宮殿の前の広場に民主化してからの初代大統領エルウィンの像を立て、そのお祝いをしました。キリスト教民主党の彼が就任したのは1990年のことですが、軍事政権の後の初代大統領ですから、彼の責任は大変なものだったでしょうね。一方的にピノチェットを批判すると彼の支持者との対決がひどくなるし、逆に全くそれに触れなければ民主化運動のグループから批判を受けるでしょうから。私は彼は4年間よくやったと思います。来年、軍事革命50周年になりますから、ボリッチはそれをどう取り上げるか考えているでしょう。

外交問題

ボリビアがオランダのハーグ国際法廷にチリを訴えていたシララ川問題はチリのその川の水の使用に不正はないと結審されました。その川はボリビアの領土からチリの方に流れているので、チリはその川の水を盗んでいるのではないとされたわけですね。

それからペルーからカスティージョ大統領が火曜日チリを訪問。モネダ宮殿でボリッチと面談しました。その日のうちにリマに戻りました。彼はもう何回も国会で大統領職を罷免されそうになる事態に直面していますが、毎日何を考えて仕事をしているのでしょう。

検察総長の任命

ボリッチが名指ししたモラレスは上院で否決されました。与党の中で反対票を投じた議員がいるわけですね。いつもと同じ与党内の混乱。彼は自分が15年間、検察官として働いていた時の情報が流されて、それが反対票になったと言われるが、それは不適切なことではないだろうかと政府を批判するようなコメントをしています。

似たようなケースですが、新憲法に関し、だれがその憲法を作るのか、それがいつまでたってもはっきりしません。今の様子では国会で新憲法設立委員会を作り、議員が半分、一般市民が半分の数で憲法を用意するとなっても国民は喜ばないでしょうね。

「経済」

1)月例経済成長指数

中銀発表の指数は10月はマイナス1.2%でした。来年はマイナス成長は間違いないと言われますが、それではその次の2024年にどれだけプラス成長が見込まれるのか計画してほしいですね。

大蔵大臣はチリは来年からTPP11に加盟すると発表しました。外国資本がチリの鉱山に投資をしてくれるかな?

2)銅価格と為替

1ポンド3.78ドルとかなり上がりました。そのため1ドル885ペソとペソが強くなっています。1ドル1000ペソを超した時もあったのですが、10%以上もペソが強くなりました。 何度も書いていますが、このまま銅価格が上がるとチリ経済の成長率はマイナスではなくプラスになるはずです。

3)新車の販売

11月の新車の販売は31708台と前年同月の18.7%減少でした。経済の停滞、市民の購買意欲の減少はもう間違いないようです。

「一般」

1)コロナ問題

毎日の新規患者数は4000人ほどで増えることはなく、陽性率は14%ほどで安定。最近、良くも悪くもなく落ち着いています。最初の患者が出たのは2020年3月ですから、もう33か月前です。この2週間で患者数が28%減少したと言われますが、それはPCR検査数が減少したからです。

さて、以前は旅に出ると、ワクチン接種証明書(移動パス)があちこちで要請されましたが、今回は一度も見せることはありませんでした。私たちの乗った便は往復とも満席でした。ホテルの客も食堂を見ると、私たちの使った一番早い時間は満席でした。観光・仕事の国内での動きは完全に元に戻っていますね。

2)大学入試

入試申請した学生の9割が受験とか。ところで今年の学生数は昨年より5万人も減っています。義務教育の子供が学校をやめてその後どう生活するのでしょう。この辺は政府はもっと手を入れて、コロナで親が失業したというのが理由なら奨学金を出すのがベストではないでしょうか?

3)暴動騒ぎ

3年前の社会騒乱から、デモ隊が一番集まったのはイタリア広場です。そこに立っていたバケダーノ将軍の像はほかの場所に移されましたがその広場は荒れたままになっていました。それが今週から手が入って、広場に芝生の緑が見れます。その緑が続くことを願います。

マプチェの問題ですが、裁判になっているマプチェグループのリーダーのジャイツルに25年の懲役が検察から要求されました。彼が有罪になって刑務所に収監されたらそのグループは全力を挙げて攻撃に出るでしょうね。木材会社だけでなく、学校・市役所・教会そして警察署を襲うでしょう。彼の弁護士はこれは犯罪問題ではなく政治問題だと政府を批判しています。政府はこの刑期は納得できるとしています。

先週のトラックのストは収まったようですが、新聞にブリオネスのコメントが掲載されました。彼はピニェラ政権の大蔵大臣をして大統領候補 になった人です。「トラック業界の圧力に正当に対応できず、彼らの要求を呑む事態は政府として大きな問題を抱えている。これは氷山の一角で、きっと似たような例がほかにもあるはずだ」としました。

チリが民主化してから中道左翼は何回も政権を握っていますが、大きな問題はなく政治を動かしていました。今回のボリッチはそれらと比較してひどい状態というのはよくわかります。つまり彼の政権の基礎の新左翼・共産党が知識経験が少ないので運営が上手くいかないのでしょう。                   以    上

「2022年12月5日ー12月11日」

「政治」

1)ボリッチ動向

チリ投資会

28か国の参加がありました。40億ドルの投資が考えられているとか。ボリッチはその会議に出席して、各企業の代表にチリの投資は安全です。規則は最後まで変更することはなく継続しますからとしました。

ペペ・ムヒカ

元ウルグアイ大統領のムヒカとモネダ宮殿で面談しました。彼は南米の小さな国のウルグアイを世界にその存在を認めさせる光った国にする大きな業績を残しています。ボリッチもその後を歩いてほしいですが。

カスティジョ大統領

ペルーは大変なことになりましたね。彼はその朝、大統領として議会に行き、出たときは拘留されて拘置所に。一日でそんな大きな変化があるのですね。彼は先週チリに来た時、その問題を抱えていたわけで、ボリッチにいったいどんなコメントをしたのでしょう。ボリッチは彼を釈放するよう要求することも新大統領に応援を送ることもなく沈黙を続けています。ボリッチも4年の任期を完了できないと言う噂があります。まったく大統領として機能しない、チリがそのレベルを落としていくと国民の支持は最悪レベルになり、ペルーのようなケースも考えられるというわけです。

検察総長

新総長について大きな動きはなく、誰が最終候補者になるのかも決まっていません。さて先日、トラック業界のデモ・ストがありましたが、なんでも検察関係者がストに入ると言う噂があります。彼らは一般公務員よりずっと高いレベルの給料をもらっていますが、もっと頂きたいとするわけです。反政府運動ですね。どうなるかな?

新憲法

もういつもと同じで与野党ともそれを前進させる能力を持っていません。前回のように市民の投票で新憲法設置の方法を決めるとするのか委員会を、例えば議員が半数、残りは一般市民で結成するとか、方法はいろいろあるでしょうが、どれが良いのか意見が分かれ、どれを議会案として国民に提示するのか決定されません。いつも今週中に決定しますと言っていますが・・・・ボリッチは就任してからその新憲法の発効を目標にしてそれ以外は二番手にしていました。もちろん、彼とすれば、新憲法を成立させた大統領として後世に名が残ると考えたわけですね。ところが、国民から新憲法は見放され、放置していた犯罪問題や経済成長、インフレ抑制などは悪い方向に進み最悪の状況です。

「経済」

1)中銀情報

これまで11回連続して公定歩合を上げてきましたが、今回は11.25%を維持。来年4月から引き下げに向かうかもとか。しかし中銀の来年の予想は投資は減少、成長率はマイナス、そしてインフレは継続するとしています。

環境保全に関する投資では、ソキミチのリチウム関連などを含め今年1-11月で587件が申請されましたが、それは昨年の867件より大きく下回っており、1997年以来の最小の数字とか。投資全般が落ち目なのですね

2)インフレIPC

11月は1%で、過去12か月では13.3%の上昇です。最近、過去12か月の数字は減少していましたが、今回は逆に上昇しました。つまりまだ落ち着いて いる状態ではないということです。1994年以来の最悪の状況とか。細かい点ですが、売り上げ額が大きく減少している例として携帯電話42%減少、パソコン42%、テレビ39%などが上がっています。

2)銅価格と為替

1ポンド3.85ドルと上昇。そのため1ドルは879ペソとペソ高になりました。ボリッチも大蔵大臣もこの数字にニッコリでしょうね。

「一般」

1)ロ・バスケ教会

8日はカトリックの祝日でした。サンティアゴとバルパライソの間に位置するその教会に100万人を超える人が押し掛けました。コロナで2年間、この集まりは禁止されていたので、2年ぶりに盛り上がりました。教会の近くから教会まで膝まづいて歩いたり、もっと厳しいのは寝そべって腹部を地面につけて前進です。以前のお願いがかなったので、そのお礼に腹ばいで教会に入りますと信者の一人がテレビカメラに向かって苦しそうにコメントしていました。チリのカトリックは年々人気を失っていますが、こうした行事は根強いですね。

2)コロナ問題

最近、ほとんど動きはなく一日あたり新規患者最高4000人、新感染率は13%ほどです。10月末に一日8000人19%の感染率でしたから、以前のように政府が統制をしていないのに、明らかに下がっていますね。

3)マプチェ問題

コジプジ地区で家屋への放火が起きました。もういつものことですね。山火事、マプチェと関連しませんが、高温と乾燥から山火事が広がっています。各地で消火作業が続いていますが、大変です。

4)チリ人の考え

世論調査で現在のチリは他のラテンアメリカ諸国と比較してどうだろうと聞かれると

チリ人の回答は次のようでした。

*ほかの国より犯罪がひどい    60%

*ほかの国より経済成長が低い   44%

*政治の安定さが低い       40%

明らかに3年前の社会騒乱以前とはチリ人の心境が変わりました。それまではチリはラ米のトップと思っていたのですが。

サンティアゴの隣のバルパライソ州で不法建設(空き地に勝手に家を建てる)が昨年403ヘクタールだったのに今年は650に急上昇。政府は何もできないのですね。もちろんそこだけではなく首都圏も同じですが。またバルパライソの住宅地の近くの山地にも火事が起きるでしょうね。

北部のラスカル火山が噴火を始めました。サン・ペドロ・デ・アタカマと言う観光地の近くです。                               以  上

「2022年12月12日ー12月18日」

「政治」

1)ボリッチ動向

クロアチアの大統領ソラン・ミラノビッチとモネダ宮殿で面談しました。彼はボリッチに両国が国交を結んで30年の記念をこうしてお祝いできるのは何よりの喜びとしました。それにボリッチにあなたはクロアチア人としました。これは少しおかしいですね。ボリッチの祖父はチリのパタゴニアに入った最初の欧州移民10名の一人ですが、祖父はユーゴスラビア人でしたから。プンタ・アレナスに立派なユーゴスラビア人会館がありましたが、それがクロアチア人会館に名前が変わりました。それは同国の国内紛争の結果ですね。彼はそのプンタ・アレナスにも訪問予定とか。なんでもチリ国内に30万人ものクロアチア人とその子孫がいるらしい。でも彼がチリにいる間にクロアチアはサッカーのワールドカップ準決勝で負けました。怒り狂ったか、泣いてしまったかのどちらかでしょうね。それでも最後は3位になりました。

ボリッチは警察に227台のパトカーを渡しました。3年前は警察はデモ隊をいじめるとクレームしましたが、今は警察と固く手を組んでいます。彼は市民との集会で皆さんの安全を第1にする政策を実施しますとコメントしました。もっともそれをどう実施するか疑問視する意見と遅すぎるという批判も出ています。警察と軍隊を組んで犯罪グループに充てると言う考えもあるとか。これも問題になるでしょうね。彼は新左翼ですが、最近、かなり右翼ぽいですね、南部でマプチェに対して特別区を設定し軍隊を派遣していますが、それを北部でも実施するかもしれません。不法移民が多く入り市民の安全が脅かされている北部に今週、トア内務大臣が訪問し、アリカで軍隊の派遣を示唆しました。今までと同じくペルーとの国境から不正に入国する移民が後を絶ちません。その辺りには地雷が置かれていますが、車がその地雷で破壊されたのが映りました。乗っていた人がどうなったかはわかりません。さてそのペルーですが政治不安から国が機能せず、大勢の観光客が自国に帰れない状態です。チリの外務大臣も同国に残されているチリ人をどう保護するか考慮中とか。

ところでペルー国内でチリに奪われた土地(アリカなど)の返還を要求しようと言う声が出ているとか。太平洋戦争でチリに負けて取られた領土ですね。ボリビアが国際法廷に訴えたのと同じことです。

ところで、ボリッチがチリに住み始めたバチェレットと手を組んで歩いているのがテレビに出ました。彼女の知恵を借りるのでしょうか。またボリッチは森林火災視察のため隣州のバルパライソに出向き警察軍のヘリコプターで上から火災を見ました。そして消火に当たって負傷した消防員を見舞いました。これがしばらく続きそうです。

2)新憲法

とうとう各党の間で合意事項が出ました。それを国会で最終確認をしますが、投票時期設定も考えられています。前回の新憲法委員会の議員を全員選挙で選んだ失敗を避け、議員・専門家それに一般市民の3つのカテゴリーになります。専門家の中に前・元大統領を入れるか討議しているとか。なんでも上下院議員24名、専門家24名そして一般市民委員50名の構成とか。これらに関する投票は自由ではなく義務制にすることを考えているらしい。義務制でなければ、投票所に行かない人が大勢出ることは間違いないでしょう。

ところで新憲法案が少し進んだこともあってチリ国の安定性は6月末以来、最も良いランクになりました。落ち着てきたとみられるわけですね。政府はこのアイデアに関し細かい点には問題があると言われても全般としては大きく一歩前進したと評価しています。

ところで、日本は防衛に関し大きな変化をしていますが、それは憲法違反ではないでしょうか。誰も言いませんが。

3)検察総長

ボリッチは女性のマルタ・エレナを推すことにしました。彼女に関して詳しいことは知りませんが、議員の中からどうしてこんな人を選ぶのかとする批判が出ています???

野党側から、右翼ですが、前回と同じく新左翼と関連があるように見られる人を検察長官候補として推薦するのかとのコメントが出ています。また拒否されるだろうとするわけです。明日、上院で投票されますが、また拒否されたら、政府は検察長官になりたい人は立候補してくださいと逃げるかな?

ドイツでは選挙の時、最低投票数として投票の何パーセントを取れなかった党を認めないシステムがあるそうですが、それを使えば現行のチリの新左翼はほとんど全部が政党になれないとか。私はボリッチ政権が始まった3月から、彼の基盤の新左翼・共産党をあまり良く感じていませんが、多分、一般市民も同じで、次の選挙では両方とも大きく落ち込むでしょう。私の予想ですが・・・。

「経済」

1)来年の経済予想

新聞の特集で来年の予想が出ました。全体的にはチリの経済成長は来年はマイナス成長だとみられています。ラテンアメリカで唯一マイナス成長になるのがチリとか。そのマイナスのベースですが、一つに政治不安定性があります。新税制の問題とか消費税IVA問題も。何と新左翼議員が各自が積み立てている厚生年金を引き出す権利を認める案を出しています。これで6回目です。これはチリ経済にマイナスの動きになると政府は反対していますが新左翼は全く気にしていません。そして来年マイナスになった場合、その次の2024年はV字回復できるのか話題になっています。

ところでガソリン価格は最近10ペソほど(約1円ですね)下がっていますが、来年はメプコシステムのため毎週10ペソほど上がる由。ディゼルの方は3週間ごとに30ペソ上げるとか。

2)銅価格と為替

1ポンド当たり3.73ドルと先週よりかなり下がりました。がっかり。為替はほとんど変わらず1ドル875ペソでした。

「一般」

1)暴力行動

マプチェの攻撃を抑えるため国会で南部の特別地区の認定がされ軍隊の駐屯が認められました。もう日常的ですね。近年の多くの事件の中で印象に残るのはリヒンゲル・マカイ夫婦殺害事件です。老夫婦を家に閉じ込め放火で焼き殺したのですが、それで逮捕され18年の刑で刑務所に入った犯人が、刑期半分もたたないうちに条件付き釈放になりました。しかしテムコの地方裁判所は一般市民と違った考え方をしますね。

高校生の暴力デモ

またバスに放火する事件が起きました。今までに130人が逮捕されています。419件の暴力デモが起きていますが、有名高校の近くで起きたのはIN高校が94件、INBA高校が89件と目立っています。先週に書きましたが、今年は学生数が5万人ほど減少しており、それもいれて文部大臣は何をしているのかとする批判の声が上がっています。

2)山火事

先週の予想通り、山火事が継続です。もうこの先しばらくは山火事問題がコロナ問題よりチリにとって重要問題になりそうです。今の段階で95か所で火災が起き、そのうち5か所はまだ火災が継続です。8000ヘクタールの火災で死亡者が2名、88の家屋が燃えました。昨年より161%も高い数字です。それに関連して放火の疑いで一人が逮捕されました。その火災のため煙が街を覆い、そのため首都圏で戸外に出ないようにしてほしいと言うコメントが厚生省から出ました。日曜日はそれが解除されました。

3)コロナ問題

感染者数1日4000名、感染率13%くらいが続いています。バスに乗ってもマスクをしていない人の方が多いです。チリではコロナ問題はもう重要な問題と思われなくなってきました。                             以   上

「2022年12月19日ー12月25日」

[政治]

1)ボリッチ動向

国家賞の授与

今年度の国家賞授与式にボリッチは科学・文化関係の5分野で特に際立った活躍をした5名を選出し、表彰式を実施しました。

外交

パレスチナにチリ大使館を設置し大使を派遣することにしました。イスラエルが激怒でしょうね。先日、イスラエル大使の認証でももめました。

 山火事

ビーニャの火事現場に行って消防関係者を励まし、被害者を慰めました。最初、現場に大臣を何人か送り出したのですが、火事が大きくなったので自分も行ってみようと思ったのでしょう。

2)国会

サンティアゴ区の区長から出された要請が国会で認められました。同区は首都の中心にある区ですが犯罪の増加、露天商問題、それに高校生デモから教育問題と通常の生活が困難になっています。そこで区長がボリッチに介入を求め、区ではなく国として問題軽減を図ってほしいとしたわけです。野党側と与党の中の中道左派が賛成しました。と言うことは新左翼などの与党側は反対したわけですね。ところでその区長は共産党員です。彼女は同党からどんな叱責を受けるのかな?

警察や軍隊の助けを求めるとは何事かと言われるのでしょうか。3年前の社会騒乱の前にはチリにはそんな状況は無かったのですが。新左翼グループが社会を変えたわけです。それを押さえようとピニェラは警察の動きを強化しましたが、新左翼は政府は暴力で正しい市民の要求を抑えようとするとクレームしました。同じことを現在は自分たちがしているわけです。地方選挙がそのうちありますが、野党側は同区長の席を取り戻したいと候補者選びを始めています。

検察長官

ボリッチが推したチリ大学卒の弁護士マルタ・エレラは議会で否決されました。2回連続で政府の敗北です。ユーチュ-ブにこれに関する議会のビデオが掲載されたので見ました。国会で法務大臣がどうして政府はその候補者を推すのか説明し、その後、議員が各自の見解を発表していました。しかし政府が自分の基盤である与党を統一できないと言うのが情けないですね。その件に関しボリッチは最高裁判所の首脳と電話連絡とったとか。どうすればよいのか相談したのですか?新聞に政府は議会とネゴする能力はないのかと厳しい批判が書かれています。

憲法委員会

各党が合意に達し、一歩前進となりましたが、今週の世論調査はそれと全く違う雰囲気です。社会騒乱の後、新憲法を作るかどうかの投票で約8割が賛成票でしたが、現在はそれが半数を割りました。いくつかの世論調査でほとんど全部の結果が新憲法を必要としないと言うのが過半数でした。つまりこの国会でいろんな委員を選び(国会議員・識者・一般市民)それが議論して新憲法の下地を作っても、市民は反対に向かうだろうとするわけです。共産党はその委員会に識者を入れるのに反対しています。さて新左翼は新憲法成立は政府の責任だとしているが、9月の投票で惨敗したのを理解していないとあります。

つまり社会騒乱のころ、軍事政権の時の憲法を俺たちが変えるんだと燃え上がったのですが、今年9月の惨敗で熱が冷め、必要なら改正すればよいという風に変わったわけです。投票が義務ならともかく、自由になれば過半数が投票しないだろうとみられます。それなら現行憲法の改正を図るのが正常でしょうね。以前、それをラゴス元大統領が実施していますが。

[経済]

1)銅価格と為替

経済の一般ニュースでパッとしたものはありません。来年は今年より厳しいというものばかりです。TPP11参入を政府は正式に発表しました。60日後、つまり来年2月から正式加盟になるとか。

さて銅価格は1ポンド3.77ドルと先週とほとんど同じ。為替は1ドル867ペソとこれも先週とほぼ同じです。

11月の航空機の利用客は180万人でした。それはコロナの前の2019年より7%下です。

「一般」

1)マプチェ問題

木材の盗伐で、マプチェグループのメンバーが逮捕されました。そのほかのマプチェグループCAMは過去25年、反政府運動を繰り広げてきましたが、今年はそのリーダーのジャイツルは逮捕され、彼の二人の息子も逮捕されました。グループが崩壊するのか、彼らの逮捕を抗議してさらに過激な行動をするのか。木材の盗伐を問われるとマプチェは「ここは私たちの土地です。チリ人が私たちの土地に入り込み勝手に使用しています」と回答します。

2)山火事

先週の予想通りで、山火事が今週の話題の中心です。金曜日の夜のテレビニュースは最初から最後までほとんど全部この火事の話題でした。新聞の1面に火事が津波のように同地区を襲ったと書かれました。観光地で有名なビーニャ・デル・マルで、街の後ろの山で火事が起こり、そのため約300件の家が延焼しました。

消防車が行けない地区は飛行機・ヘリコプターが空から消火作業をしています。もっとも山火事で延焼するのは海岸地区の立派な家屋ではなく、山の中の住居の建築にふさわしくない地区の家です。もしかすると多くが不法建設だったりして。政府がその動きをコントロールできないと言う証拠でしょうね。火事が始まったのは放火によると言う噂もあります。

チリは地震・津波とか天災が多いですが、今回は火事。被害者は大変です。ただいつものように被害者を救済しようとする動きが始まり、全国各地から義援金・物資が届けられています。先ず被災地の燃えた家の崩れ落ちた屋根や壁のゴミを取り出し、残った部分を壊して整地しています。その後、また新しい家の建築が始まるのですね。そこへ水・食品・衣類とかが届けられました。サンタクロースが来て子供にプレゼントも渡していました。その地区の火事は鎮火しましたが、全国でほかに38の火事が継続中なので、多分、すぐに他の地区で大騒ぎが始まるでしょう。

3)コロナ問題

毎日4000人ほどの患者ですが、陽性率が上がっています。金曜日16%、土曜日18%、日曜日16%です。さぁどうなるかな?以     上