『グアテマラの弟』 片桐 はいり - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『グアテマラの弟』 片桐 はいり


舞台、映画、テレビで俳優として活躍している著者の弟は、ずっと昔大学の夏休みにメキシコから南米を目指して放浪の旅に出かけた。一旦帰国し大学と大学院を卒業しながら、結局はその時見つけた中米グアテマラの田舎町に住み着いてしまった。息子の様子を知りたいという両親の要望で、姉はそのアンティグアを訪ねる。メキシコから中米、南米に下るバックパッカーたちがスペイン語を習っていくが、弟はそこのスペイン語教師と結婚し、日本人も多い語学校を切り盛りしていた。

初めて訪れてから13年後、姉はふたたびアンティグアを訪れた。植民地時代の首都であった古都は、その後何回かの大地震に見舞われたが、崩れかけた教会や修道院の佇まいの中での生活は、物珍しいことばかりだった。父親の好きだったコーヒー、しかし世界的に知られたグアテマラ・コーヒーは現地ではすばらしく不味かったが、生前の父がたどり着いたウエウエテナンゴ産のコーヒーは、今でも家族が父を思い出す逸話になっている。ついにグアテマラに行くことはなかった父は、一つの骨壺に入り切れなかったのを分骨して、今初めての海外旅行でグアテマラの弟の家にある。

姉弟、そしてその両親の交情をまじえたグアテマラ滞在記だが、何かほのぼのと読み終えることができる。

(幻冬舎174頁2007年6月1400円)