1972年にアルゼンチンに移住、ブエノスアイレス近郊の日本人花卉農家に住み込んで働いた後、ブエノスアイレスの日系貿易会社勤務を経て独立して貿易、農業機械の商売に携わった著者の、34年に及ぶアルゼンチン生活での経験、見聞を綴ったもの。
パトロン(身元引き受け雇用者)の園芸農家での労働と生活、日系人が花の都といわれるまでに拡大した花卉栽培の町、米作りの様子、パンパの動植物との出会いや魚釣りの楽しみ、ブエノスアイレスでの都会生活と変わりつつある街の様子、日本と異なる民族精神と文化の中での日本人としてのアイデンティティなどを、82の項で書き留めている。
やや冗長、平板な記述といえなくはないが、現地に長く住み、働いた者ならではの体験と観察の記録であり、アルゼンチンでの日系人の生活や仕事の環境を知ることができる。
(牧歌舎(発売 星雲社)518頁2007年6月2381円+税)