旧大陸の世界四大文明に加え、新大陸のメソアメリカ、アンデス文明を加えて六大文明というべきだとする著者は、最も洗練された「石器の都市文明」を作ったメソアメリカ文明の素晴らしさを力説している。
メソアメリカ最初の文明であるオルメカ、究極の石器の都市文明マヤ、メソアメリカ最古の都市を生んだサポテカ、古典期最大の国際都市テオティワカン、群雄割拠のトルテカ、最後のアステカ文明をそれぞれ詳細かつ判りやすく解説しており、鉄器や運送用使役家畜、荷車などがなかったことが、決して旧大陸の四大文明に遅れていたことを意味するのではないことを分かりやすく説いている。
なぜアステカが数百人のスペイン兵に敗北したかを論じながら、歴史は勝者によって書き換えられたものであり、先住民文化がスペイン文化に吸収されたのではなく、それを取捨選択して取り入れた新たな文化を創造し続けていることにも触れている。これまでともすれば、文明は大河流域の肥沃な平地で大規模な灌漑治水事業を達成した旧大陸の四大文明だけに起源があるという「四大文明史観」が定着していたが、それらとは大きく異なる高度な新大陸の二大文明の存在を見過ごしており、メソアメリカは人類史において最も洗練された「石器の都市文明」だったことを明らかにしている。
(講談社−選書メチエ 262頁2007年8月1600円+税