『物語 メキシコの歴史 −太陽の国の英傑たち』 大垣 貴志郎 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『物語 メキシコの歴史 −太陽の国の英傑たち』 大垣 貴志郎


古代メソアメリカでは、自然環境を巧みに利用し高度の文明を築き繁栄していた。しかし、征服者コルテスのメキシコ征服によりスペインの植民地として過酷な搾取とキリスト教への強制改宗という圧政の時代をむかえる。長く続いた植民地体制がやがて18世紀に入って崩壊し、独立戦争を経てやっと独立を達成するが、北の新興国米国との戦争による衰退に付け入ったフランスが干渉し、ナポレオンは皇帝マクシミリアンを送り込んで来る。建国の父ベニート・フアレスがマクシミリアン皇帝を倒した勝利の後、フアレスの急死の後に登場した独裁者ディアスの長期政権、それに対する抗議から始まったメキシコ革命が続く近代史、そして政治が揺れ動き、経済が低迷する現代2000年に至るまでを解説し、メキシコの波乱に富んだ歴史の大要をこの一冊で知ることができる。

独立運動の口火を切ったイダルゴ神父、独裁者で米国と戦って破れたサンタ・アナによる混乱を克服した二人の先住民の血を引くフアレスとディアス、メキシコ革命時に出現した農地改革を求めて謀殺された農民リーダーのサパタやパンチョ・ビージャなど、それぞれの時代を特徴づける英雄を紹介している。筆者が本書執筆の契機になったという『メキシコの百年 1810−1910 権力者の列伝』(エンリケ・クラウセ著 筆者訳 現代企画室 2004年)と合わせて読むと一層興味深い。

(中央公論社−中公新書270頁2008年2月 840円+税)