『グローバリゼーションの国際経済学 第 3 巻』 西島 章次編 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『グローバリゼーションの国際経済学 第 3 巻』 西島 章次編


『グローバリゼーションの国際経済学 新しい日本型経済パラタイム −グローバル化と人口減少下の持続可能経済第 3 巻』

「新しい日本型経済パラダイム—グローバル化と人口減少下での持続可能経済」をテーマに神戸大学が行ってきた研究成果の第3巻(第1巻「人口減少と持続可能な経済」、第2巻「公平性と政策対応」−いずれも勁草書房刊)で、最も国際経済学の立場から、グローバリゼーションに対する基本的な考え方を議論している。すなわち、現代社会において最も重要なキーワードであるグローバリゼーションは、その弊害を批判し否定する者や、その市場メカニズムによる経済問題解決を高く評価し肯定する者がいるが、共通項はグローバリゼーションをいかに有効かつ公平に機能させるかということであり、問題はグローバリゼーションの進め方にあるとする。

本書は、開発経済学、国際経済学、国際貿易論、労働経済学ならびに中国、ラテンアメリカ経済を専門とする9人の研究者が執筆した8章の論文から成る。国際貿易・投資のメリット・デメリット、貿易利益理論の展開、貿易・投資自由化の政治経済学的考察、メキシコにおけるグローバリゼーションと賃金格差、グローバリゼーションによる地域格差と中国の地域政策、ヒトのグローバリゼーションと日本の選択、そして終章グローバリゼーションの光と影という構成であるが、うちメキシコについては、貿易自由化が賃金格差の変化をもたらした理論的背景と実証研究を行っている。NAFTA以後に拡大した技能者と非技能者、高学歴者と低学歴者、正規雇用者と非正規雇用者間の賃金格差を分析し、メキシコ政府が取り組む所得再分配政策についても言及しているが、結論としてグローバリゼーションによって一時的に賃金格差が拡大したものの、国全体の高学歴化と労働者の技能拡大により、1990年代半ばから縮小傾向にある。義務教育期の子供を持つ貧困層に就学を条件に現金給付を行うPROGRESAは、今後新たに市場に参入する労働力の基本的条件改善につながる可能性があるが、グローバリゼーションを補完するものとしてかかる社会政策の有効性や問題をさらに評価・分析する必要があるとしている。

(勁草書房2008年2月228頁3100円+税)

『ラテンアメリカ時報』2008年春号(No.1382)より