『マヤ文明の戦争 -神聖な争いから大虐殺へ』  青山 和夫  | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『マヤ文明の戦争 -神聖な争いから大虐殺へ』  青山 和夫 


 高度な天文観測に基づく暦をもち、ピラミッドを建て宗教儀礼を行っていたマヤ文明は戦争とは無縁の平和な文明と思われているが、著者をはじめとする研究者たちによって視覚化された防御遺構、壁画・彫像・土器などの考古学調査から、実は生け贄にする捕虜、それもできるだけ高位の者を得るための戦争が頻繁に行われていたことが明らかになった。つまりマヤの戦争は領土を獲得するため大量虐殺するのではなく、あえて殺傷能力の低い武器で支配層のいる都市部のみを襲い、高位者を捕獲して連行し戦勝儀礼を行うことが目的であり、同時に政治的従属、献納、交易ルートを得るための交渉で優位に立つことを図ったものだったのである。このマヤの戦争は、規模や頻度の地域差・時間差はあっても普遍的に行われたことを、ライダー(航空レーザー測量)等の最新技術も駆使した、実に広範な遺跡調査によって得られた戦争の痕跡を検証することによって実証している。
 世界史の中で独自にメソアメリカで発展したマヤ文明を、戦争という視点から検証し、文明とは、戦争とは何か、そして人間社会や文化の共通性と多様性についての知見を提示した、マヤ考古学界で初めてなし得た本格的な研究書である。

〔桜井 敏浩〕

 (京都大学学術出版会 2022年11月 531頁 6,500円+税 ISBN978-4-8140-0447-8)
〔『ラテンアメリカ時報』 2022/23年冬号(No.1441)より〕