『真珠と大航海時代 -「海の宝石」の産業とグローバル市場』  山田 篤美   | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『真珠と大航海時代 -「海の宝石」の産業とグローバル市場』  山田 篤美  


 コロンブスを含む大航海時代の航海の誘因というと金やスパイスが挙げられるが、真珠獲得が目的の一つであったことは見落とされがちである。本書は、古代ギリシャ・ローマ人が東方の最上の宝石として愛好した真珠の歴史から始まり、アコヤ真珠の世界三大産地であるペルシャ湾、マンナール湾(インド南部)そして南米ベネズエラ沿岸のカリブ海の歴史を、ペルシャ湾へのポルトガル勢力の進出、インド南部マンナール湾での真珠採取がイエズス会の布教による強固な信仰心を維持したタミル系キリスト教徒の潜水夫よってなされ、真珠のグローバル市場としてゴアが大集散地となり、南米カリブ海では真珠採取のために奴隷制水産業を発展させ、その後真珠税をめぐる王権と採取業者の攻防があったことを明らかにしている。16世紀欧州で宝冠や衣装に真珠を使うことへの執着は王侯貴族の肖像画から窺うことができるが、まさに真珠は国際商品として世界経済、社会に大きな影響を引き起こしたのである。
 真珠を通じて、大航海時代史を新旧世界の三大生産圏の地域史と比較、ポルトガルがゴアを真珠によりグローバル市場化した理由、さらに欧州の「真珠の時代」を考察した、著者の博士論文に加筆した興味深いグローバル・ヒストリー。2000年前後にベネズエラに滞在したことのある著者には、『真珠の世界史 -富と野望の五千年』(2013年 中公新書 https://latin-america.jp/archives/5964 )、『黄金郷伝説 -スペインとイギリスの探検帝国主義』(2008年 同 https://latin-america.jp/archives/5669)の著作もある。

〔桜井 敏浩〕

 (山川出版社 2022年11月 282頁 3,000円+税 ISBN978-4-634-64098-6)
 〔『ラテンアメリカ時報』 2022/23年冬号(No.1441)より〕