ブラジルとベネズエラの国境地帯、アマゾン河の森には1980年になって初めて白人との接触があったヤノマミ族という先住民が伝統的な狩猟採集生活を営んでいる。密林の中で先祖の祭りや儀礼を通じて、常に自然の精霊に畏敬と感謝の念をもって、自分たちの生存に必要最小限の獣を狩り、魚を捕り、マンジョカを植える平穏な生活をしてきた。
しかし、この地帯で金を採掘しようとするガリンペイロのならず者が、1993年のある日突然ハシムー村を襲い、16人のヤノマミ族を殺戮し家々に火を放った。ヤノマミの男たちは顔と身体を黒く塗った戦いに臨む姿で、ガリンペイロの侵入に抵抗するべく立ち上がる。広大なアマゾンに住む他の民族も、再び襲われた時には共に闘うと約束し、部族の違いを超えて力を合わせることになった。1987年から99年にかけて、ヤノマミ族が住む土地に、彼らの人口の5倍にも相当する3〜4万人のガリンペイロが侵入し、1500人もの命を奪っている。
著者はリオデジャネイロ州教育長官を務めるブラジル教育界の第一人者だが、アマゾン河流域等で起こったゴールドラッシュの中で拡大した先住民の大量虐殺を糾弾して本書の筆を取った。エドムンド・ロドリゲスによる挿絵と簡略な文、全文の葡語対訳、訳者による字句の詳細な注釈とブラジルの先住民問題の解説が付されている。
(田所 清克・嶋村 朋子訳 国際語学社 2007年8月 30頁 1,000円+税)