『超積乱雲』 醍醐 麻沙夫 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『超積乱雲』 醍醐 麻沙夫


ブラジルに在住する作家による、アマゾン河流域に入植した昭和初期に始まる日本人移民の喜怒哀楽を壮大なスケールで描いた大河小説。

11 歳で両親、弟ともにマウエスに入植した池田登与子を軸に、一家の当初の開拓の苦闘、木島武司との結婚の約束、ベレンへの移転後野菜の栽培、販売で生活が軌道に乗り始めたところで、第二次世界大戦が勃発。ブラジルと日本は国交断絶し、日本人移民は苦難の生活を強いられる。トメアスにジュート、ピメンタ(胡椒)栽培の適地を求めて移動し、登与子の才覚によってピメンタで成功する。そして終戦、サンパウロ州に旅行中だった武司は、勝ち組による敗戦認識者へのテロ抗争に巻き込まれて監獄入りを余儀なくされる。遙々トメアスから面会に来た登与子と武司は結婚したものの、武司は旅を続け自分を見極めたいとボリビア、ペルーへ向かうが、リマでの勝ち組騒動の後、あらためて登与子への思いを自覚しアマゾンに戻って再会するまでの波乱の家族史を描いたものである。

アマゾン移民や勝ち組・負け組抗争のいきさつなど、現地に長くいる著者ならではの細部にわたる記述は、まさにひとつの移民史である。

(無明舎出版 567頁 2008年3月 2800円+税)

『ラテンアメリカ時報』2008年夏号(No.1383)より