連載エッセイ213:硯田一弘 「南米現地最新レポート」その41 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載エッセイ213:硯田一弘 「南米現地最新レポート」その41


連載エッセイ210:硯田一弘

「南米現地最新レポート」その41

執筆者:硯田一弘(アディルザス代表取締役)

「1月2日発」

新年明けましておめでとうございます。

年末にもご報告しました通り、6年あまり住み慣れた首都アスンシオンから東の街ことエステ市近郊のHernandarias市に引っ越しました。まだ開梱も終わらないまま新年を迎えましたが、今年もパラグアイを中心に南米のニュースをお伝えします。

先ずは明るいニュース。La Nacion紙電子版によりますと、パラグアイの観光大臣が観光気球のメッカであるトルコのカッパドキアの民間事業者を誘致して、Hernandarias市にある世界最大の水力発電ダムであるItaipuダム上空を飛ぶ観光熱気球事業を今年後半に開始する予定とのこと。
https://foco.lanacion.com.py/2023/01/01/globos-aerostaticos-apuntan-a-ser-la-nueva-atraccion-turistica-de-paraguay/


実現するとこんな景色が見られるようになるのかも。

一方で、問題のあるニュースもいくつか報じられています。大晦日から元旦にかけての一晩で、家庭内暴力を訴える緊急通報が200件以上も警察に寄せられたとのこと。
https://www.ultimahora.com/sistema-911-nochevieja-deja-mas-200-llamadas-violencia-intrafamiliar-n3041455.html
今年のカレンダーは大晦日が土曜日、元旦が日曜日なので二連休になるケースが多く、これに年末年始のお祭り飲酒が加わって、暴力の多発に繋がった模様です。

また、アスンシオン市で発生するごみの量が一日3000トンにのぼるとのニュースも。
https://www.abc.com.py/nacionales/2023/01/01/asuncion-genera-3000-toneladas-de-basura-por-dia/
アスンシオンは周辺人口も含めて200万人で、3000トンのゴミの6割が一般回収ゴミ、4割は道路や河川から集められるとのこと。つまり家庭ごみとしては日本での家庭ごみの目安とされる一人一日1kg弱程度で、日本と同じレベルの量のゴミが排出されている計算となりますが、正規の回収ルートに乗らないゴミが多くあるという問題点が浮き彫りになります。因みに、日本でも都道府県別のゴミ排出量のデータをみると、東京都のゴミが年間4600万トン、人口14百万人で割り戻すと、一日900g/人。茨城県は280万人で年間110万トン、アスンシオンよりはゴミの量は少ない感覚です。

http://grading.jpn.org/SRH5609.html#:~:text=%E6%9C%80%E4%B8%8A%E4%BD%8D%E3%81%8B%E3%82%89%E3%80%811%E4%BD%8D,%E3%81%AE260%E5%8D%83%E3%83%88%E3%83%B3%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82

ところで、Hernandarias市の今日の最高気温は37℃、アスンシオンは40℃と表示されています。真夏の正月なので、当たり前とも言えますが、それにしても暑い!ゴミの燃焼による二酸化炭素濃度の増加も地球温暖化の原因とも言われています。ゴミの量を減らす為に何ができるか?何をすべきか?についても考えを巡らせる猛暑の正月元旦となりました。改めまして、本年もよろしくお願いします。

「1月8日発」

2023年も早くも二週間目を迎えようとしています。日本では急激な円安からの振り戻しで、物価高騰の懸念が和らいだようで、ニュースで物価が取り上げられる頻度が減ったように感じます。一方、パラグアイでは通貨グアラニがジワジワ対米ドルで値を下げているために色々なモノの値段が上がってきています。

年末に西のアスンシオンから東のエステ市近郊に引っ越したことは既に御案内の通りですが、このアスンシオンとエステ市とを結ぶ国道2号線の通過料金も1月1日から値上げされました。最寄りのMinga Guazu料金所の通行料はこれまでGs.16,000(約2.18ドル≒291円)でしたが、今月からGs.17,000(約2.32ドル≒309円)と約6%も上がりました。

また、金曜日にはディーゼルの料金改定があり、写真の通りディーゼルの殆どの油種が1ℓ当たりGs.10,000(≒182円)超えとなりました。
https://www.ultimahora.com/los-emblemas-alzan-inmediato-el-precio-del-gasoil-ajuste-del-isc-n3042311.html

ガソリンはオクタン価によって異なりますが、ハイオク97でGs.8,900≒16円、レギュラー95でGs.7,960≒145円となっています。ん?ディーゼルの方がガソリンより高い?変じゃない?と思われる方も多いと思いますが、製油所での製造コストはガソリンもディーゼルも大きくは変わりません。ただ、日本ではディーゼルはトラックやバスなどの社会インフラを動かす車輌で多く使われるので、税金で調整して安くなっているのです。
https://web.motormagazine.co.jp/_ct/17104629  パラグアイだけでなく、世界中の多くの国ではガソリンもディーゼルも価格差は殆どないというのが実態です。

実は1月1日元旦に、国境を越えてクルマでブラジルに出向いてきました。普段渋滞する国境の橋も、元旦はスイスイと渡れて、自宅から僅か20分で対岸に到着。ここで改めて確認できたのは、今やブラジルの方がパラグアイより燃料代が安いということ。レギュラーガソリンを30ℓ給油して、160レアル(約30ドル≒4070円)でしたから、1ℓあたり136円。パラグアイより7%ほど安い!

でも、パラグアイではペトロブラスの給油所で月曜日にItau銀行のデビットカードを使って給油すると15%引きになるのです。レギュラーなら123円/ℓ!ブラジルブランドのスタンドと銀行決済で、ブラジルより更に安くなる燃料代。不思議ですが、これがパラグアイの不思議なところ。他のブランドのスタンドでも、銀行と組んで色々な割引制度を導入しています。日本のガソリン代も、一時期高騰して社会問題化しましたが、補助金の投入で沈静化した感があります。
https://e-nenpi.com/gs/price_graph/6/1/0/

しかし、燃料代だけでなく、社会インフラの様々なコストは今後も需給のバランス次第でまだまだ高くなる可能性はありますので、今年も世界情勢をめぐる日々の国際ニュースから目を離せないと言えます。

ところで、引っ越したことで思い出したのが中学生になった時に国語の教科書に載っていた川端康成の随筆「朝の光の中で」ハワイのヒルトンホテルに滞在した時にコップの光をみて、この新鮮な気持ちを持ち続けよう、と語る文章だったように記憶しますが、本当に何事も一期一会、今年も一つ一つの出会いを大切にする一年にしたいと思いますので、引き続き宜しくお願いします。

「1月15日発」

日本からの出張者が、昨日土曜日、ブラジル側Foz do Iguacuの空港に到着し、仲間が迎えにいったものの、ブラジルを出国するイミグレが長蛇の列となり、半日以上の時間をかけて漸くパラグアイ側に入国できるという事態に遭遇しました。

Ultima Hora紙でも報じられていますが、今週はブラジル方面に休暇に出掛けるパラグアイ人が大勢いて、しかも今週末はブラジル側の出入国管理事務所が普段の半分のスタッフしかいなかったことで、普段の何十倍もの負荷がかかって事務所の能力を大幅に上回り、今回の不便が生じたようです。
「Para agilizar paso en Migraciones, Brasil pide llenar formulario virtual」 (出入国管理の円滑化のためにブラジル政府はオンラインでの用紙記入を推奨)
https://www.ultimahora.com/para-agilizar-paso-migraciones-brasil-pide-llenar-formulario-virtual-n3042803.htmlオンラインでの入国申請
https://www.gov.br/pt-br/temas/immigration-public-services

ただし日本人は2019年からビザなしでの入国が出来るようになりましたので、この申請は必要ありません。
https://tabiris.com/archives/brasilvisa-2/#:~:text=6%E6%9C%8817%E6%97%A5%E3%82%88%E3%82%8A%E3%83%93%E3%82%B6%E5%85%8D%E9%99%A4&text=%E3%83%93%E3%82%B6%E5%85%8D%E9%99%A4%E3%81%AF2019%E5%B9%B4,%E6%BB%9E%E5%9C%A8%E3%81%8C%E5%AE%9F%E7%8F%BE%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
↓一方、新型コロナ対策などの感染症情報に関しては、駐ブラジル日本大使館からのお知らせを参照してください。
https://www.br.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_00479.html#:~:text=%E5%BF%85%E8%A6%81%E6%9B%B8%E9%A1%9E,%E3%81%AF%E9%81%A9%E7%94%A8%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%9B%E3%82%93%E3%80%82
恒常的に渋滞が発生するパラグアイ・ブラジル間にかかる友情の橋の様子は、テレビのニュースで頻繁に報道されますし、365日24時間リアルタイムで橋の様子を観られるサイトも存在します。

これを書いている15日日曜日10:30時点では、引き続き多くの車列がパラグアイからブラジルに向かっている様子が判ります。
https://foz.portaldacidade.com/cameras-ao-vivo/ponte-da-amizade-sentido-paraguai

国境のエリアであるエステ市周辺で暮らしていると、対岸ブラジルのFoz市は同じ生活圏であり、普段の買い物や学校・病院等の公共サービスで日帰りで出向く機会は極めて多く、そうした場合はいちいち出入国管理事務所に届け出る必要はありません。しかし、Foz空港から他の国へ出国する等の場合は、パラグアイからの出国とブラジルへの入国が記録される必要があり、それがブラジル側での超混雑を引き起こしている原因とも言えます。

ブラジルとアルゼンチンの国境も橋の向こうとこっちという感じで、交通量の少ない時は、パラグアイからブラジル経由でアルゼンチンに夕ご飯を食べに行く、ということも出来るのですが、この週末の様に観光客等が大勢押しかける時期は、ゴールデンウィークの新幹線や高速道路の様な異常な混雑が発生します。

ブラジルに一晩でも滞在してパラグアイやアルゼンチンに入国しようとすると、黄熱病の予防接種証明であるイエローカードの提示も求められ、これが無いと入国を拒否されますので御注意ください。

今日も多くの飛行機が拙宅の上空(パラグアイ方面)からブラジルのFoz空港にアプローチしています。旅を楽しいものにするためには、念入りな事前の調査と、現地でのコーディネートが重要です。

「1月22日発」

政府の方針に批判的な新聞abc color紙の今日の報道によると、道路整備の予算は4億ドル(約520億円)の予算超過であるとのこと。
https://www.abc.com.py/economia/2023/01/22/obras-del-gobierno-registran-un-sobrecosto-de-us-403-millones/

道路整備に関しては、日本でも先週高速道路の無料化目標時期が2115年まで50年延長された、と報道されました。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA142270U3A110C2000000/

パラグアイの超過予算は520億円、日本の道路関連債務は28兆円なのでパラグアイの540倍の超過予算と言えますが、日本ではあまり問題視されている印象はありません。パラグアイでは道路の整備がインフラ公共投資の最優先事項とされる一方で、国民が政府の予実管理に向ける視線は非常に厳しいものがあります。(実際にはマスコミがしっかり監視機能を果たしている、ということですが。)

パラグアイの国土交通省MOPCのホームページをみると、全国で着々と舗装工事が行われていることが判りますが、前々から書いている通り、最近10年間での道路整備の進捗ぶりは目を見張るものがあります。https://www.mopc.gov.py/index.php/noticias/tag/pavimentaci%C3%B3n%20asf%C3%A1ltica

しかも、道路の整備に関して、これまで輸入100%資源であるアスファルトが道路舗装の限られた資材でしたが、今後の公道整備に関しては最低でも20%は国産資材でまかなえるコンクリートを用いるべき、という法律が整備され、道路のコンクリート化が進んでいます。一方で有料道路の料金徴収に日本のETCのような非接触型のシステムが導入され、今週はその手続きに行ってきました。https://tapepora.com.py/bin/telepeaje

現在西の端に位置する首都アスンシオンから東の端エステ市に至る国道2・7号線を利用すると、4カ所の料金所を通過することになりますが、このうちエステ市よりの2カ所でTelePeajeという非接触型の徴収システムを利用できます。これにより、最大20%の割引が受けられるので、利用者にとってのメリットは極めて大きいと言えます。

因みに一回の普通乗用車の通行料金はGs.17,000≒約300円、一日の平均交通量が15,000台とのことで、料金所一カ所の年間の通行料金収入は乗用車だけと計算しても16億円、高速道路の舗装費用は1㎞あたり500,000ドル≒と言われており、ひとつの区間が80㎞とすると、総工費は4千万ドル≒約52億円ですから、単純計算すると3年強で舗装工事の経費を回収できる計算になります。勿論、これに補修費用等のメインテナンスコストが常にかかるので、こんな単純計算では実際の採算は図れませんが、いずれにしても道路整備は民間企業にとって魅力的な投資ということになるでしょう。そうなると、今日の記事の520億円相当の負債も、複数の路線でキッチリと有料化を進めれば、いずれ改修可能になると考えられます。

税金が無駄に使われないよう、また公共性の高い事業でも民間活力を利用して基本的なインフラ整備を進めるという点で、パラグアイの将来は極めて有望と考えられます。

「1月29日発」

日本では異例の寒波とのことですが、1月になってからパラグアイでは猛暑が続いています。
https://www.ultimahora.com/domingo-ambiente-caluroso-y-chaparrones-gran-parte-del-pais-n3045785.html
雲一つない晴天が続いたことで、本当に厳しい日差しが肌を刺すような毎日でしたが、昨日土曜日は夕方から少し雨が降って温度は少し下がりました。今日の天気に関しても、Domingo con ambiente caluroso y chaparrones en gran parte del país(日曜日は暑さが続き、全国的ににわか雨が降る見込み)と報じられていて、朝から湿度の高い状況です。

昨日土曜日は朝から気温が上昇する中、また停電に見舞われ、空調の利いた環境を求めて近所の大型店舗に出掛け、昼食をエステ中心部で摂った後、そのまま国境を越えてFoz do Iguacuに出向いてショッピングセンターで避暑しました。

ブラジル国境のエステ市=東端は、アルゼンチン国境のアスンシオン=西端と比べて平均気温が2℃ほど低いので、アスンシオンよりも少しは凌ぎ易い筈ですが、近所に大型商業施設があった首都での生活は、何かあれば歩いてエアコンの利いた環境に避難できたのですが、エステではそれは難しく、クルマでの行動が基本になりますし、停電の頻度も高いので、チョッと大変さが増した感じです。。

先週の日曜日も朝から大雨が降って、家の何カ所かで雨漏り対策を打ちましたが、今日の言葉をニュース検索したところ、スペイン北部のPontevedraの新聞でも、二週間前の大雨の記事で、各地で雨漏り被害が発生したという写真が掲載されていました。

https://www.diariodepontevedra.es/articulo/pontevedra/lluvias-agravan-danos-colegios-institutos-aguantando-chaparron/202301170815081235805.html
こちらの雨は日本のようなシトシト長時間ふるよりも、短時間に豪雨が土砂降りになるケースが多く、一旦降ると雨漏りは勿論、冠水や停電のリスクも発生します。先週の雨の際も停電に見舞われましたが、昨日は晴天だったにも拘わらず朝から停電となったので、家の外に出ざるを得なかった訳で、降っても照っても停電となるエステ市周辺のインフラ、早く首都並みに整備して欲しいと思います。橋を渡ったブラジルFoz市でも昨年末に仕事で出向いた際に大雨が降り、停電となりました。大雨は街路樹をなぎ倒し、それが電線を切って停電に繋がる訳です。大雨と停電の関係は、まだ暫く続く印象です。

ところで、chaparronと似た音の単語で、chicharron(チチャロン)というのがありますが、これは豚の皮の部分をラードで揚げた食べ物で、南米では人気の食材。

https://www.google.co.jp/search?q=chicharron&sxsrf=AJOqlzWCATSXDMQs59x-Hk7lfiju0iajiQ:1674995421840&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ved=2ahUKEwjK3fmY5Oz8AhWCALkGHUB3DxcQ_AUoAnoECAEQBA&biw=1280&bih=520&dpr=2
揚げ方によって、また揚げる部位によって味も食感も違いますが、スナック感覚でポリポリ食べられ、ビールのおつまみに最適で、気が付くと洪水の様にビールを流し込むことになりかねないので、こちらにも御注意を。

以    上