連載エッセイ221:新井賢一「南米コロンビア・雲と星が近い町から」その9 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載エッセイ221:新井賢一「南米コロンビア・雲と星が近い町から」その9


連載エッセイ 218

「南米コロンビア・雲と星が近い町から」その9

執筆者:新井 賢一(Andes Tours Colombia代表 ボゴタ在住)

日本(人)の方々に史上初紹介・クンディナマルカ県グアドゥアス(Guaduas)

今回は首都ボゴタから西へ車で約3時間ほどの場所にあるクンディナマルカ県グアドゥアス(Guaduas)村を日本(人)の方々に史上初めて紹介します。グアドゥアス村は色々な検索サイトで調べても過去に日本人旅行者の滞在記などが一切ない「超穴場的観光地」です。

グアドゥアス村の歴史は古く、スペイン植民地時代から首都ボゴタと西に位置する大河マグダレナ川とを結ぶ街道の途中の宿場地として栄えていた場所です。現在もそれは変わりなく、村内を貫く街道は中長距離ルートの大型バスやトラックなどがひっきりなしに行き交う大動脈となっています。そのような主要道路から外れて村の中心部に入るとまさに一変・別世界が広がります。これは街道からでは全く分からない為大多数の人々はこのグアドゥアス村を素通りしてしまいます。

グアドゥアス村中心部の建物群はどれも歴史を感じるもので白壁で統一されています。驚愕・絶賛に値するのは中心部を散策しているとどの建物にも落書きの類が一切全くありません。驚異的とも言えます。これはこの村の旧市街地区が国の歴史的文化財として重要な中心部国内13選の一つになってる事が挙げられるかと思います。強い日差しを受ける白壁の建物は、それはもう素晴らしいの一言に尽きます。

また石畳が基礎となっている小道も風情を感じるもので、ここまでよく整備された旧市街地区は国内でも今や数少ないのではないかと思われます。昨今コロンビア国内で寂れた村の村おこしが進んでいますが、それは建物を派手に塗装・装飾しているのが主流です。その流れに完全に逆らうようにこのグアドゥアス村中心部はあくまでも白壁で統一されています。

1800年代初頭に完成したサンミゲル・アルカンヘル大聖堂と目の前に広がる石畳を基礎にした大きな広場も特筆に値します。白の大聖堂も強い日差しを浴びるとそれは美しく映えます。また、大聖堂から広場を見るとその先には山々が広がっています。グアドゥアス村周辺を含むクンディナマルカ県一帯もコロンビアコーヒーの生産地であり、街道沿いの山々の斜面にはコーヒーの木々を多数見る事が出来ます。

グアドゥアス村中心部は国の重要文化財的地区になっている事もあるのでしょう。建物群は昔ながらの景観を保ち、その景観を乱すデザインの新しい建築物は全くと言って良いほど見当たりません。その中にあって一部は博物館になっていて内部を見学する事が出来ます。ここは1700年代に造られた、内部に昔の調度品その他が沢山並べられている博物館(Museo Artes y Tradiciones Patio del Moro)です。ただでさえ古い町並みの中、内部に入るとタイムスリップしたような独特の空間が広がります。

博物館内部はレストランにもなっていて朝10時から食事を取る事も出来ます。とてもお洒落な造りになっていて歴史を感じるのは言うまでもありません。素晴らしいと感じました。

このレストランの名物料理が画像の「フィアンブレ」と呼ばれている一品です。大きなバナナの葉に包まれてテーブルに届き、縛っているタコ糸をほどくと中にはライス・チキン・ポーク・大ぶりのじゃがいも・揚げバナナ・煮込んだキャッサバなどが入っていてボリュームタップリです。これにスープ・生ジュース、画像にはありませんがデザートにコーヒーまで付いて何と18,000コロンビアペソ(約500円・2023年1月現在)という破格の料金でした。

コロニアル時代から街道沿いの宿場地として栄えているグアドゥアス村中心部には複数の宿泊施設があります。バックパッカー向けの安宿から画像のお洒落なブティックホテルまで選択肢は幅広く、決して大きくはないこの規模の村でこれだけ宿泊施設が多く、しかも建物の基礎は変えないまま内部に大改修を施してお洒落なホテルに仕立て上げている所も複数あります。このホテル、画像では見えませんが奥には綺麗な屋外プールもあります。このレベルなら文句なしでしょうね。

更に驚くべきは、このグアドゥアス村中心部には実に多くのカフェがあります。中心部の広場を囲むように席を設置しているカフェもあれば、石畳の路地に同じく席を設けているカフェもあり、数の多さだけではなくお洒落で且つ良心的な料金が特徴です。

画像の大きめのカップに注がれたコーヒーと焼きプリンでたったの7,000コロンビアペソ(約200円・2023年1月現在)という安さです。前述のレストランもそうなのですが、ここグアドゥアス村は複数あるレストランのメニュー価格が観光地料金として跳ね上げている訳ではなくどこもとても良心的で、且つ美味しいというこの上ない所です。加えてカフェもこの内容です。コーヒーは付近の畑で収穫・焙煎した豆を使用している所もありました。

グアドゥアス村の魅力は日中映える白壁の建物と石畳の小道だけではありません。夜の中心部、これもまた素晴らしいものです。ライトアップされた白壁の建物がこれまた実によく映え、前述のカフェの席はどこも観光客で一杯でした。こんな小さな村にどこからどうやってこんなに大勢の人々が集まって来たのかと驚くほどです。

夜の石畳の小道を散策しました。人の行き来が多い事もあり危険を感じた事は微塵もありませんでした。むしろ歴史ある白壁の建物が淡くライトアップされていて幻想的な一時を感じました。道路が石畳で出来ている事もあり、たまに通り過ぎる車は速度をゆっくりと落としながら走行する為、騒音というものも感じませんでした。昼も夜も魅力的な旧市街の小道、素晴らしいの一言に尽きました。

こちらは夕食を取ったCasa Realという名のレストランです。博物館内のレストランで昼食を取った為ここには夕食の為入りました。日中のCasa Realの内部も観光名所として有名です。にしても夜の内部もまた違った良さがあり、1700年代に建てられた建物がとても幻想的でした。このレストランのメニューも個性的です。昼食に前述の料理を取ったのでここでは一品とビールを注文し20,000コロンビアペソ(約550円)とこれまたとても良心的でした。築約300年の建物がごく当たり前のように現存しているという事に深い感慨を覚えました。

村の中心部外れにある市場は早朝から日が暮れるまで開場していて歩いて内部を巡るだけでも楽しめました。画像の”プラタノ(調理用バナナ)”は朝方に付近で無数にみられる木々から刈り取ってきましたよと言いたげに沢山並べられていました。コロンビアのコーヒー地帯の農園にはコーヒーの木々を直射日光から守る為日陰を作る為にこのプラタノの木を畑に植えている所が沢山あります。すなわちコーヒー生産の副産物とも言えます。

今回僅か一泊二日の小旅行で訪れたグアドゥアス村ですが過去の日本人旅行者の滞在記など全くなく、しかしながら白壁の建物と石畳の小道が実に素晴らしく、且つお洒落なホテル・レストラン・カフェが沢山あってしかも料金がとても良心的というまさに「超穴場」の観光地です。今までコロンビア国内の色々な観光地を訪れていますが、このグアドゥアス村はその中でも総合点で間違いなくお勧めに値するという自己評価です。25年ここコロンビアに住んでいながらその存在をつい最近まで知らなかったという点でお宝もの的場所を発見した思いです。