『日本から一番遠いニッポン —南米同胞百年目の消息』 三山 喬 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『日本から一番遠いニッポン —南米同胞百年目の消息』 三山 喬


朝日新聞で13年間記者をした後、リマで邦字紙『ペルー新報』の記者をしながら南米取材を続けてきたフリージャーナリストによる南米日本人移民のドキュメント。

ボリビアの奥アマゾン河上流の僻地には、今なお日本名の地名や姓をもった人たちがいる。ペルー移民のアマゾン・ゴムブームを目指したアンデス下りの日本人の末裔たちだが、現地の女性と結婚して出来た二世、三世には日本語はもとより日本文化・慣習の痕跡はほとんどない。ペルーには日系二世の闘牛士がいるが、当時のペルー社会の排日気運の残りから日本人の血が入っていることは恥ずかしかったという。ブラジルでは勝ち組テロの記憶、在日ブラジル人若者の社会問題、アマゾン移民の現実、邦字紙記者仲間を取り上げているが、そこに共通するのは移住者が常に直視させられる「同化」か「非同化」という自問である。

ブラジルの勝ち組・負け組抗争にしても、負け組が現実を認識してブラジル社会への同化で生きていかなければと考えたのに対し、勝ち組みは日本民族の独自性を維持していこうという考えだったのだが、それは現在それぞれの文化の違いを認め合いつつ共存していこうというグローバリゼーションの流れに通じるものがあると解するなど、日本も移民労働者の大量移入が真剣に考えねばならなくなっていきている現在、興味深い事例が多く一読に値する。

(東海教育研究所発行・東海大学出版会発売 2008年6月 342頁 2800円+税)

『ラテンアメリカ時報』2008年秋号(No.1384)より