『中南米が日本を追い抜く日 —三菱商事駐在員の目』 石田 博士構成 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『中南米が日本を追い抜く日 —三菱商事駐在員の目』 石田 博士構成


中南米9カ国—ブラジル、チリ、アルゼンチン、パナマ、ベネズエラ、キューバ、ボリビア、コロンビア、ペルーの三菱商事のラテンアメリカ駐在員が、それぞれの任国での仕事や生活、お国ぶり、異なる人々の暮らし、その背景にある歴史からグルメ事情に至るまで、現地の生の情報を伝えることで、遠く離れた本社の社員に身近に感じてもらおうと、本社の関係部署に毎週送ったメモを基に、朝日新聞サンパウロ特派員が各地に点在する駐在員から聞いたエピソードを交え、構成したものである。

世界の食料庫となってきたブラジルの農畜産、チリのワインや養殖鮭の対日輸出の苦労、日本市場の見えざる非関税障壁に阻まれるアルゼンチンの農牧産品、パナマ運河拡張の一大プロジェクト、世界が注目する地下資源を持つチリ、バイオエタノールの輸出国ブラジル、風力発電や自動車用水素燃料を進めるアルゼンチン、石油の国家管理を強化するベネズエラ、カストロ後のキューバなど、商社マンならではのビジネス最前線での動きが紹介されている。しかし、かつて新自由主義の実験場だったチリ、初の先住民大統領を選んだボリビア、テロとの闘いに注力したペルー、コロンビアなど、政治や社会の変化にも目を配っている。ブラジルの知られざる先端産業—航空機製造、金融や税務面で優れたブラジルのIT、情報通信産業への参画経験は、中国や南アフリカなどの新興国で活かせるはずであり、グローバル展開に繋がるとしている。

商社マンが見た資源、エネルギー、食糧の宝庫であるラテンアメリカが、いま経済成長、民主化のパワーによって大きく躍進しようとしている姿を読者に生き生きと垣間見せてくれる。

(朝日新聞出版−新書 2008年6月 223頁 720円+税)

『ラテンアメリカ時報』2008年秋号(No.1384)より