日本社会には39万余の南米人が暮らしている。本書は、在日日系ブラジル人をめぐる犯罪、その犯人の母国への逃げ帰り、子弟の教育や就職に立ちはだかる排他的な日本社会の現況、彼らの親たちの意識などの問題を正面から取り上げ、日本で犯罪を行いながらブラジルに逃亡した容疑者をその故郷にまで追い、デカセギからの帰国者のその後の生活と心情を現地にまで取材したドキュメンタリー。
日本人のブラジル移住が始まってから100年、一世、二世と、現在の日系人の考えや生き方は大きく変わってきていているところへ大量の日本へのデカセギの輩出は、ブラジルでの日本人共同体を変質させている。一方、日本社会ももはや否応なしに外国人労働者を受け入れなければ生産現場やサービス分野が回らない状況にあるにもかかわらず、共生の意識と態勢はほとんど進んでいない。地方の南米人集住地域の行政、公立学校は対応に苦労しており、ボランティアの驚異的な働きに依存している現状の問題点を、多くの実例の取材と日本・ブラジルの識者へインタビューによって明らかにしている。
(新潮社 2008年11月 254頁 1500円+税)