『逆さまの地球儀 —複眼思考の旅』 和田 昌親 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『逆さまの地球儀 —複眼思考の旅』 和田 昌親


地球儀を逆さにすると欧米や日本などが赤道の下になり、南米やオーストラリア、南部アフリカが上になるが、時としてこういった視点で世界を見る複眼的な思考が必要と、日本経済新聞のサンパウロ特派員をはじめニューヨーク、ロンドンに駐在した著者が多岐な題材を駆使して国際人の必要条件を説く。

北では非常識とみなされることは南では常識ことを、豊かなアルゼンチンの経済破綻、ブラジル経済の復活、NAFTAに入ったメキシコなどを概観した後、1980年代の累積債務問題について、「貸した側が悪い」「国は国、個人は個人」という“南の論理”、中南米特有の借金感覚という、異なる借金文化を紹介する。禁酒・禁煙運動、セクハラ防止、環境保護などをヒステリックな段階まで進んでしまうアングロサクソンに対し、それらでも何らかの逃げ道を残し、人生をエンジョイするのがラテン系とするなら、日本人はアングロサクソン流の規律への過剰反応が見られるものの、本来は村社会やお祭り好きな点でラテン的、玉虫色解決など許容範囲広い、柔軟な思考が出来る筈という。

南北を縦断する旅をすれば、「ラティーノ」が次第に人種構成でも、文化でも大きな部分を占めるようになってきた米国の実態に気がつく。かつての米国の“裏庭”では、ボリビア、エクアドル、ベネズエラ等の国々で左翼政権が次々に出現し、南の国々は自己主張を強めているのである。

著者の東西南北を飛び回る知的関心が旺盛な旅は、読む物を飽きさせないが、やはり気になるのはいびつな国際化といわざるをえない、外から見た日本の将来である。逆さまの地球儀の下にわずかに見える日本が、本当に米国追随一辺倒でよいのか?という点は、外交、安全保障だけでなく、経済、通商、金融分野でも「居心地のよさ」を捨て、米国に率直にものをいい、地域全体、他国の繁栄のためにコストを払う時期に来ていると指摘する。外を知り、内を知れば知るほど、世界から取り残された日本が心配であり、「非グローバル主義」といわれても仕方がない面を、日本語を解さない外国人には不親切、不便極まりない成田空港や、すぐれた技術力を持ちながら国際標準から外れ鎖国状態である情報通信の例を挙げて分かりやすい。

難民に優しく、待ったなしの外国人労働者の受け入れ体制を作り、日本流でよいからとにかく英語で情報の発信・受信をできるようにすることを説き、最後に「少子化日本の生きる道は3K—改革、開放、国際化である」という、知日派の前英国大使の言葉で締めくくっている。

(日本経済新聞出版社2008年12月247頁1900円+税)