『マヤ文明の興亡』 ジョン・エリック・シドニー・トンプソン 青山和夫訳 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『マヤ文明の興亡』 ジョン・エリック・シドニー・トンプソン 青山和夫訳


古代マヤ暦と西暦の関係を確立し、マヤの暦、天文学、図像学、宗教、神話の研究に多大な実績を挙げ、20 世紀を代表するマヤ学者といわれた英国のトンプソンによる不朽の名著といわれた解説書の完訳。19 〜 20 世紀前半のマヤ研究の集大成だが、その後の数多くの考古学発掘やマヤ文字の解読などによる調査研究の進展によって、今日ではトンプソンの学説の少なからざる部分は否定されているものの、その考古資料、民族史料、マヤ文字の研究成果は、今日でも依然として大きな価値をもっている。

今あらためて本書が刊行された意義は、トンプソンの学説を実証的に否定することによって、その後のマヤ考古学・歴史研究が大きく進展した原点の著作であるということもさることながら、現在日本で最も活躍しているマヤ考古学者のひとりである訳者による随所の訳注と、原著者が用いた日本人には分かりづらいマヤ文明と欧米史、社会との比較に解説を加え、全般にわたって関連情報やトンプソンの研究以降の新たな知見、史実の補足があって、読者が現在到達しているマヤ文明の研究レベルとの違いも理解しつつ、マヤ文明を総合的に知ることができるということにある。

本書では、マヤ文明の環境と編年の検証、マヤの都市国家群の起源と繁栄、マヤ文明の衰退、知的・芸術的な偉業、マヤ人の生活の点描、宗教の各章が続き、最後にマヤ文明を回想してもう一度発展と衰退を考察している。

マヤ文明が「究極の石器都市文明」であるとする、巻末の「訳者解説」と合わせて通読すれば、マヤ文明に関心のある者にとって大いに有用な解説書である。

(新評論 2008年12月 427頁 4500円+税)

『ラテンアメリカ時報』2009年春号(No.1386)より