『21 世紀ラテンアメリカの左派政権:虚像と実像』 遅野井茂雄・宇佐美耕一編 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『21 世紀ラテンアメリカの左派政権:虚像と実像』 遅野井茂雄・宇佐美耕一編


21 世紀に入ってラテンアメリカでは左派政権が数の上では主流になった。ここで「左派」というのは、伝統的な左派政党、民族主義とポピュリズム、農民運動や先住民運動等の社会運動にそれぞれ起源をもつ政権を意味するが、現代ラテンアメリカの左派政権はチリ、ブラジル、ペルー、コスタリカといった穏健左派と、キューバ、ベネズエラ、ボリビア、エクアドル、それにアルゼンチンの急進左派に二分できる。本書はラテンアメリカ全体の左派政権登場の新たな波についての解説とともに、これら9カ国の政権の成立の背景と基盤、その社会、経済、外交政策、課題を、それぞれの地域専門家が分析したものである。

左派政権が多数出現したのは、一向に解消されない貧富の格差や、1990 年代の新自由主義への反動、強大な米国への反発といわれているが、大統領選挙時やその後の言説と実際の政策との間には各国で差違があり、上記二分法では収まりきれない多様性があることが分かる。一人歩きした観がある「左派政権」という虚像に対し、それぞれの国の事情を背景にした現代ラテンアメリカの諸問題の実像を知るために適切な解説書である。

(アジア経済研究所 2008年11月 347頁 4300円+税)

『ラテンアメリカ時報』2009年春号(No.1386)より