『アメリカの中南米政策—アメリカ大陸の平和的構築を目指して』 ロバート・A・パスター 鈴木康久訳 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『アメリカの中南米政策—アメリカ大陸の平和的構築を目指して』 ロバート・A・パスター 鈴木康久訳


本書は、カーター政権の国家安全保障問題(中南米カリブ地域)担当大統領補佐官を務めた政治学者、ロバート・A・パスターの単著Exiting the Whirlpool: U.S. Foreign Policy toward Latin America and the Caribbean Westview Press 2001 の全訳である。1992 年に刊行された原著の第一版は、1994 年および98 年の米州サミットにおける「西半球における民主主義コミュニティ」の議論に一定の影響を与えたとされる。本書はその増補改訂版で、グレナダに関する新事実やクリントン政権の分析などが書き加えられている。

米州関係は長い間、「小さな国々が大きな問題」となるような、非生産的な循環—原著のタイトルにある「渦潮(whirlpool)」はその比喩である—に陥ってきたという。即ち、キューバやニカラグアにおいて典型的にみられたような、独裁、革命、低開発、そして脆弱な民主主義である。著者はこのとき、米国の覇権的な力、或いはラテンアメリカの防御的な力のいずれかに偏って力点を置くのは問題を見誤っている、と指摘する。二つの力は相互に規定的で、共倒れの傾向を生む。

著者の回答は、各国が主権国家として国益を追求する自律性を保持しながら、価値と目的の収斂と共有によって国際協調を実現することである。人的・知的交流がこれに有利な土壌を提供する。相互依存論やソフトパワー論に通じる部分があり、米国のリベラル派のラテンアメリカニストとして押さえておきたい。

(明石書店 2008年7月 504頁 6000円+税)

『ラテンアメリカ時報』2009年春号(No.1386)より